Vol.07 「青虫が証拠」有機栽培と就農までの戦い [新規就農]

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
今回取材した網代さんは、千葉県八街市で26歳の時に新規就農を実現させた。幼少の頃から伯父さんの経営する花卉(かき)園芸を手伝っていた彼は、自分のやりたいことは農業だと信じ、大学では林業を専攻。その後、園芸専門学校へ進学するが、作物を育てるという体験に感動し、新規就農を目指した。ここでは、彼の新規就農までの道のりと、今後の農業に関する考えを聞いた。

 

"やりたいこと"をみつけたキッカケ

 幼い頃から伯父の花卉園芸を手伝っていた彼は、伯父の影響もあり大学は林業を専攻。将来は公務員か花卉園芸をしたいと考えていたという。そんな彼は大学卒業後、やりたいことを探すために、大手種苗会社の専門学校に入学する。そして、この専門学校での実習が、彼の"やりたいこと"をみつけるキッカケになったのだ。

 種苗会社では、週4日植物を育て、様子を観察する実習があった。この"モノを育てる"という一連は、すべて手作業で、実に昔の農業的な体験だったという。この「植える→育つ→できる」という一連の植物の変化に、自分が"モノを育てる"ことの感動を覚えた。「これを仕事にしたい」と考えた彼は24歳の時、迷わず新規就農への道を目指した。しかし、彼の新規就農への道も平坦ではなかった。

 

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500 万と伴侶。充たせない条件・・・

 早速、地元の松戸市の農業会議所に相談に行くも、新規就農資金としての500万とパートナーとしての伴侶が就農の最低条件だろうと跳ね返された。悔やみに悔やみきれない彼は、農業に関する研修や視察を続けた。この行動力が、彼の新規就農への道を拓くことになったのだ。25歳の時、彼は大学の先輩の農場に視察に行く。これが、有機農業とのはじめての出会いだった。

 「有機でもこんなにできるのか」と有機農業の可能性に感動した彼は、有機農業や人材交流なども行なっている"帰農志塾"に3カ月の研修に入る。彼は、塾での研修を「自分がどんどん前進していくのがわかった。新規就農までの道のりで一番楽しかった」と語る。同じ志を持った新規就農希望者との交流や、塾長の農業への思いに感化され、彼の就農への思いは育っていった。

 

消費者と顔の見える関係構築で、青虫さえ有機栽培の証拠に

 研修を終えた彼は、地元である松戸市内での新規就農に見切りをつけ、千葉県八街市での新規就農を実現させる。農業に必要な機械は何もないまま、畑13aと水田10aを借りた。畑は鍬(くわ)、水田は万能(まんのう)で耕したという。彼は、楽しくてしょうがなかったと、当時の様子を話す。その後2年目で畑70a、3年目で畑1haと凄まじい速さで農地を拡大。1haは有機農業者1人では多すぎると、4年目から現在まで、90aの畑を運営している。

 有機農業の楽しさを、彼はこう話した。「農業も職人商売だと思ってます。だから、買ってくれるお客様には手紙を必ず同封します。そして、この手紙が、お客様に嬉しい変化を起こすんです」という。彼は、青虫の例を挙げて話してくれた。一般的な消費者であれば、葉物野菜に青虫が付いていたら、苦情が殺到してしまうだろう。しかし、消費者との顔の見える関係を構築し、有機栽培での生産に関しての手紙を同封することで、その青虫さえ有機栽培の証拠となっているという。

 

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有機農業をやるからこそ、野菜作りを続けたい

 ビジネスとしての有機農業についての問いに対して、彼はこう答えた。「ライフスタイルとしての農業。この農業で食っていけるのであれば最高だと思います。しかし、食っていく農業をしなければならないと考えるならば、これまでの有機農業では難しいのが現実です」と熱く話す。だからこそ彼は、自らがやりたくない農業生産をするしか、農業で食べていく道がないのであれば、"半農半X"と呼ばれる兼業農家のライフスタイルを選ぶだろう、と有機農業への思いを語る。

 ビジネスとしての農業を見据えるのであれば、大型機械を活用し、画一的に生産する体制を整え、自給率の低い大豆の生産がよいのではないかと彼はいう。しかし、製品として農作物を作りたくない彼は、有機農業をやめようとは考えていない。有機農業と現実の農業を融合させ、持続可能な農業を実現したいと夢を語ってくれた。

 有機栽培での生産やニッチ商品の生産など高付加価値な野菜を作る生産者が増えるなか、それらの野菜をどのように販売するのか。有機農業では販売が一番の課題だろう。これまでの慣行農業のような生産のみの農業者では、農業所得が下がるのみになってしまい、持続可能な農業にはなりえないのだろうか。

プロフィール
網代宏和(34歳)千葉県松戸市生まれ。
東京農工大学卒業後、タキイ園芸専門学校卒業。
農業や種苗の研修を経験後、26歳の時、千葉県八街市にて1反3畝の畑と2反の田んぼを利用し、新規就農。
現在は就農8年目。9反の畑を利用し有機栽培による野菜を生産。
千葉市緑区や若葉区の個人消費者を中心に個人宅配を行なっている。

業種・業態

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