Vol.3「特許出願の時間差攻撃でまとめてアイデア保護」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

アイデアを模倣から保護したくても特許出願のタイミングを間違えるととんでもないことに。。。

 商品アイデアを模倣されないようにするための一つの方法が、特許出願をして特許権を取得し、商品アイデアのもととなる発明を保護することです。

 特許権を取得できれば、特許発明を勝手に模倣する第三者の行為を差し止めしたり、損害が発生していれば損害賠償を求めたりすることができます。

 でも、特許出願しただけでは特許権を取得することになりません。しかも、特許権を取得するまでにはある程度の時間がかかります。そのため、特許権が成立するまでの間に他人が勝手に発明を模倣していても、その行為を差し止めることはできません。

 人気商品の場合、競合会社も便乗しようとします。もし、その商品が模倣されやすいものであれば他社のキャッチアップも速いので、販売時に特許権が成立していないと、すぐに他社商品が市場に流れてきます。

 例えば、(株)バンダイが持っている玩具入カプセルの自動販売機の特許権は、特許出願から特許権が設定されるまで、当時、6年間もかかりました(特許第3267512号)。

 その後、裁判期間を経て、ようやく競合他社の自動販売機の製造販売を差し止めることができたのは、特許出願から実に13年後でした(平成19年(ネ)第10098号 特許権侵害差止等請求控訴事件)。

 ほかの特許権と合わせて起こした裁判だったこともありますが、かなりの時間がかかった事例です。

 一方、特許権は期限付きの権利です。権利の存続期間は、特許出願から原則最長20年間です。ただし、実際には特許出願から特許権になるまでの時間を差し引くことになります。

 なので、ライフサイクルの短い商品の場合、特許権を取得できたときには商品寿命がすでに尽きていた、ということにもなりかねません。
 

技術の進歩を考えた特許出願のタイミングとは?

 一方、技術は常に進歩しています。

 そのため、これがベスト、という技術はないし、常に改良点が出てきます。また、イノベーションによって従来とは全く別の技術が現れてきます。

 特許出願するには、これらのタイミングも考える必要があります。

 せっかく特許出願して特許権を取得しても、その頃には保護しようとする発明・技術内容がすでに古くなって使われなくなってしまった、というのでは意味がありません。

 基本的な発明を保護するための特許権でない限り、技術の進歩に合わせて特許出願をし続ける必要があります。

最初の特許出願から1年以内が最大のチャンス

 最適な時期に特許出願をする、といっても、いつが最適な時期かを見極めることは結構難しいこともあります。また、同じ発明であれば、もっとも早く特許出願をした人に優先的に特許権が設定されるため、時期を見極めている間に他人に特許出願されてしまっては意味がありません。

 となると、発明が完成した時点でまず特許出願をして、追加の発明があったときにその都度、元の特許出願に追加できれば、技術が進歩する分も含めて発明全体をしっかり保護できることになります。でも、このような都合のいいことができるのでしょうか。

 通常は、一度特許出願したものに新たな事項を追加することはできません。
 でも、最初の特許出願から1年以内であれば、新たに生まれた関連発明を追加して一つの新しい特許出願をすることができます。この制度を国内優先権主張出願制度といいます。

 この制度を利用することによって、技術の進捗があっても、それらを含めた広い範囲で発明を保護することができます。

 例えば、株式会社鈴木製作所(http://www.suzuki-ss.co.jp/)は、ハイエンド層に特化したロックミシンおよび包装機械の製造を事業の2本柱とするメーカーです。

 この会社が特許出願する場合には、量産品の試作段階で特許明細書の作成に着手し、商品販売の直前まで待ってから出願しています。この会社が取り扱う製品は、製品販売したからといって、すぐに模倣されるような簡単なものではないため、販売直前の特許出願でも大丈夫なのです。

 その代り、製品を市場に投入した後、お客さんに使用されて初めて気がつくような改善点が出てくることもあります。重要な改善点の場合には、それらも模倣から保護する必要があります。そのようなときには、この国内優先権主張出願制度を利用して権利範囲を更新します。

 また、株式会社福島エコロジカル(http://www.eco-miimo.co.jp/)は、電気を使用しない無電化自動ドアを開発した会社です。

 この会社の社長さんが無電化自動ドアに関する発明を特許権で保護するにあたって、まずは、基本的な発明を保護するために試作品を展示会に出展する前に特許出願をしました。展示会に出展してしまうと発明内容が公表されてしまうので、その後に特許出願をしても特許権を取得することができないばかりか、競合他社に早速模倣されてしまいます。そこで、そうなる前に手を打ちました。

 その後、改良を続けては出願し公表するというパターンを2回ほど繰り返し、発明の完成度が高まった段階で国内優先権主張出願制度を利用して、3つの特許出願を一つにまとめた特許出願をしました。

 このように時間差出願をしたものを一つの特許出願にできるのは1年間という限られた時間ではありますが、生まれた発明を包括的に漏れなく保護することができます。

 ところで、この制度を利用した場合の特許権の存続期間はどうなるのでしょうか。

 特許権の存続期間は原則、特許出願日から20年間です。ということは、例えば、最初にAという発明を特許出願して、10か月後にBという関連発明を追加したA+Bでこの制度を利用して特許出願した場合、A、Bで存続期間が異なってしまうのでしょうか。

 実は、この場合、最終的に残る特許出願は、A+Bでの特許出願なので、存続期間もこのA+Bの特許出願日から20年間となります。つまり、Aの部分は、実質的には20年+10か月となって、10か月分お得になります。

 ただし、Aの特許出願とA+Bの最終的な特許出願との間に、第三者がA+Bの特許出願をしてしまった場合には、Bの部分について特許権が認められない場合があるので注意が必要です。

1年経ったらもう手はないの?

 国内優先権主張出願制度は、最初の特許出願から1年以内に利用できる制度でした。

 それでは、1年経過後には、このような時間差出願することはできなくなってしまうのでしょうか。

 特許出願した内容は、出願から1年半経過した後、世の中に公開されます。ということは、出願から1年半以内であれば、特許出願した内容はまだ誰も知ることができません。

 この間に新たな特許出願をすれば、国内優先権制度のように一つの特許出願とすることはできませんが、追加発明を別の特許権で保護することができます。

 1年半が過ぎた後は、最初の発明の周辺部分を主役とする新たな発明に基づく特許出願をしていって、アイデアを複数の特許権からなる特許の網で保護していきます。

経営戦略から特許出願のタイミングを考えよう

 このように特許出願は、発明の内容だけでなく、その商品の製造販売時期や製品のライフサイクルを考えて行う必要があります。

 どのような発明内容で、いつ特許出願したらいいのか不安に思われる方は、ぜひ、専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。

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