Vol.29「純正品以外の互換品、特許権侵害にならない範囲はどこまで?」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

photo credit: MoHotta18 via photopin cc

2014年も師走となり、年賀状の季節です。自宅で年賀状を印刷する方も多いでしょう。この時期、たくさん使われる家庭用プリンターのインクカートリッジ、量販店などに行くと「純正品」と、それより安い互換品のインクが売られている事に気づきます。ついつい安い方に手が伸びてしまう方も多いのではないでしょうか?

家庭用プリンターは本体を安く売って、インク代で稼ぐビジネスモデルです。プリンター本体は安いものだと数千円から売っています。下手をするとパソコンを買うとおまけでついてくる場合もあります。それほどプリンター本体は廉価で販売されていますが、それだと儲からないことは容易に想像できます。

そして、意外と高いのがインク。カラーインクのセットだと数千円くらいします。プリンター本体と変わらない価格にビックリすることもありますよね。ここがプリンターメーカーの稼ぎ所というわけです。しかし、そんな稼ぎ所を他社の互換品に奪われてしまうと、純正品メーカーとしては困ります。よって、消耗品も当然ながら特許権などで保護しています。

ある製品のメーカーが、その自社製品用のパーツや関連製品として販売している製品や部品のことを純正品とか、純正部品とか呼ぶことがあります。なぜ、「純正」なのかというと、製品メーカーがその製品を製造する(組み立てる)際に使用したものと同じあるいはそれに準じたものとして、製品メーカーが自ら、又は、他社を認定して製造・販売しているからです。

一方、当製品の製造元・販売元ではない他社が製造・販売する関連製品のことを、互換品、サードパーティー製品と呼ぶことがあります。

そもそもなぜ、サードパーティー製品が出てくるのでしょうか。なぜ。-、特許侵害にならないのでしょか?

互換品は特許権的に大丈夫なのか?

複数の製品に共通して使用される部品がある場合、その部品の流通量が多く見込めるために、純正代替型のサードパーティー製品が参入する余地があります。

このようなサードパーティー製品として、例えば、インクジェットプリンターのインクカートリッジ、自動車やカメラの部品などがあります。

特に、インクジェットプリンターのインクカートリッジのように消耗が早く交換頻度が高い部品は、第三者の参入余地が大きくなります。

でも、他社の参入を容認すると、自社の純正部品の販売が落ち込んでしまいます。そこで、利幅が見込める部品については、製品メーカー側が製品本体だけでなく、パーツや関連製品についても特許権などの知的財産権で保護しようとします。

これについて、インクカートリッジのリサイクル品がインクカートリッジの特許権を侵害するか、しないかが争われた裁判が何件も提起され、多くの裁判で特許権者側が勝ちました。

では、どんな場合に特許権の侵害とされるのでしょうか。

通常、正当な権利者から購入したものを使用したあとで、リサイクルするような場合には、権利侵害とされることはありません。

これは、権利者が自分の製品を販売しているものを正当に購入した時点で特許権が消尽しているため、そのままの状態で再度販売しても特許権を侵害しないからです。

ここでのポイントは「そのままの状態」で再び流通させたということです。

インクカートリッジ裁判のうち、最高裁まで争った事例では、使用前の特許製品中に使用によって消耗される部材(インク等,消耗品)が存在する場合、特許製品の使用によって消耗品が消耗し、その後、その特許製品に消耗品を補充する行為自体は、特許製品の同一性を損なう行為に該当しないのでOK、と解釈できる内容でした。

つまり、そのままの状態で販売しているとみなせる場合には、権利侵害にならないということになります。

一方、その裁判で問題になったインクカートリッジは、もともとインク補充ができない構成になっているものに穴をあけてまで消耗品であるインクを補充したものでした。このようなことは、インクタンク本体をインクの補充が可能となるように変形させることであり、再生産であって認められない、とされました。そのままの状態ではなくなっている、ということです。

サードパーティー製品が消耗品の補充程度の内容で提供されているものであれば、権利侵害とはならない可能性があります。

特許製品の部品を他社が作った場合はどうなる?

一方、権利侵害の問題としては、間接侵害の問題があります。

特許権の世界では、特許発明のすべての要件を満たしていなくても、直接侵害を引き起こす蓋然性の高い、一定の予備的・幇助的行為を侵害行為とみなしています。これを間接侵害といいます。

具体的には、特許製品の重要部品を実施するためだけに用いられるものが該当します(これを「専用品」といいます)。
  例えば、特許権が取得された万年筆用のインクが、特殊なインクであって、その特許製品の万年筆にしか使えないようなインクを製造販売する行為がこれにあたります。

一方、このインクが他の用途にも使用できる場合には、すぐに間接侵害にはなりません。

でも、
(1)特許発明によって課題の解決に不可欠なものであること
(2)そのインクが広く一般に流通するものではないこと
(3)その万年筆が特許発明であることおよびインクがその特許発明の実施に用いられることを知りながら製造販売するものであること

といった場合には、間接侵害になってしまいます。

この間接侵害が問題になるのは、そもそも部品が組み込まれる製品そのものが特許権を侵害している場合です。

なので、正規の製品に使用される部品であれば、このような問題は生じません。

でも、例えば、先のリサイクルインクカートリッジに新たに必要となる部品の製造販売は、間接侵害とされる可能性があります。

互換品の製造販売の範囲は、その部品の使用用途や権利範囲で決まる

部品の流通量が多く見込める部品は、それだけ利益を得やすいものもあり、純正代替型のサードパーティー製品を提供したい、と思う第三者が参入してきます。

そこで、サードパーティー製品の製造販売を抑えたい場合には、あらかじめ交換部品も特許権で保護できるようにしておくことが必要になります。

一方、サードパーティー製品を出したい場合には、その部品に関する特許権の有無や内容だけでなく、その部品が組み込まれる製品本体が、他社の特許権を侵害するかどうかといったことにも注意する必要があります。

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