知的財産:Vol.56 自作の「アプリ」は守られない?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 iPhoneやiPad用のアプリケーションソフトを開発し、公開するブームが起きています。比較的リーズナブルな料金で、アプリケーション開発ソフトが入手でき、一個人でも、極めて容易にアプリケーションをつくることができるようになっています。こんな状況下、それらアプリケーションの模倣や盗用の問題が頻発しているようです。
 

アイフォーンイメージ開発から公開まで

 iPhoneやiPad用のアプリケーションソフトといえども、れっきとしたソフトウエアですから、企画→開発→テスト→配布の手順を踏みます。実際に、開発と配布は、アップル社が提供する環境(iPhone SDKやApp Store等)を使うことになります。一方で、企画やアプリケーション自体の機能のアイデアに関しては、当然、思いついたみなさん一人一人の創作物で、最終的に作成されたアプリケーションの画面のデザインもみなさんの創作物となります。そして、最終的には、ネットを通じて公開され、一般ユーザに使ってもらうことになるわけです。
 

気軽に創作できるがゆえに

 気軽にアプリケーションを開発できるがゆえに、アプリケーションの権利について、世界中でいろいろな問題が起きています。
 例えば、iPhoneを傾けるとビールを飲むバーチャル体験ができるアプリケーションを開発した中小企業が、これを模倣したアプリケーションを消費者に提供した大手ビールメーカーを著作権侵害で訴えたり、著名なゲームソフトに似たゲームアプリケーションを提供した個人が、著作権を有するゲームメーカーから警告を受けて、アプリケーションの公開を中止したケースなどなど……これらはまだ氷山の一角。
 気軽に開発ができてしまうからといっても、特許権や著作権など知的財産の存在を最初から意識しておかないと、後になってとんでもない事件に巻き込まれる可能性があるのです。
 

著作権保護イメージ実は甘い保護の実態

 もしもあなた自身がアプリケーションのアイデアを新規に考えついた場合、どのような権利でそのアプリケーションが保護されるのかを考えてみましょう。  まずすぐに思いつくのが著作権だと思います。著作権は、アプリケーションが完成した瞬間に、アプリケーションのデザインやプログラムのソースコードそのものに発生する独占権です。しかし、著作権は、似たような著作物それぞれに独立した著作権が発生するため、例え似ていても権利侵害であると判断されないケースが多々あります。というのも、著作権侵害は、マネをしたかどうかが問題で、他のアプリケーションの存在をまったく知らずに独自に考えついたのだとしたら、OKになる場合もあるのです。独占権とはいうものの、なんとも心もとない権利なのです。
 一方で絶対的な独占権として特許権があります。しかし、こちらは特許庁に出願し、かつ、審査を経て始めて権利として認められます。しかし、手間も時間もかかるため、個人でアプリケーションをつくったからといって、特許出願をする人はほとんどいないと思います。また、出願したからといって、必ず特許権が取得できるわけではありません。特に、アプリケーションソフトのゲームルールのような単なる約束事には、技術的な新しさを含みませんので法律で保護する発明とはいえず、特許権は取れないと考えたほうがよいでしょう。

 アプリケーションソフトの開発および提供をビジネスとして行うとすれば、まず他者の著作権を侵害しないようにケアしつつ、画面の中にコピーライトの表示をしっかり入れるなど、マネされにくい環境を自ら構築していく。また、著作権や特許以外に、アプリケーション名で商標登録を得るなど、周辺を固めるという方法を検討してもいいでしょう。いずれにしても、今回例に挙げたアプリケーションビジネスの場合、知的財産権を取得して独占権を主張するのは難しいというのが結論です。それよりも独自性の高い製品をつくり、スピーディに知名度を高め、いっきにシェアを拡大していく。守るより、攻めるの考え方でトライするべきだと思います。

 

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