知的財産:Vol.36 小室氏問題に学ぶ。他者からは見えない『著作権契約』とは?

知的財産
音楽著作物の著作権契約にまつわる詐欺事件が話題になっています。新聞で大きく取り上げられている事件ですから、他人事のように思われますが、本当に他人事としてかたづけてしまっていいのでしょうか?今回は、事件を背景を探りながら、著作権契約について説明していきます。

そもそも目に見えない物にまつわる契約

 今回の音楽の著作物が問題になりましたが、そもそも著作物は、ほかの財産(土地や家屋やお金)と違って、目に見えない財産で複製が容易だという特徴を有しています。ですから、だれがどんな権利を持っているのかも把握しにくくなっています。それが故に権利関係が複雑に思われたりするのではないでしょうか。目に見えない物を取引の対象とする契約を結ぶわけですから、契約にまつわるトラブルが多いのも容易に想像ができると思います。

 

著作権の契約の形態

 複写権や放映権や出版権などの著作権にまつわる契約には、いろいろな形態があります。特にその形態の中で問題になるのが独占的な契約なのではないでしょうか。平たく言うと、「あなただけに使わせてあげます。」「あなたにも使わせてあげるが、ほかの人にも使わせてあげるから」といった内容です。また、それに加え「私(著作者自身)も使います。」とか「私(著作者自身)は使いません。」といった条件が入るケースがあります。完全な独占権なのか、非完全な独占権なのか、契約を結ぶ場合は、このような契約の形態には十分に留意してください。

 

 

誰と誰との間の契約? 第三者との関係は?

 「契約」は、原則的に当事者間にのみに効力が及び、第三者にはその効力が及びません。

また、著作権の場合、その契約の内容を役所に届け出たり登録したりする義務もありません。つまり、著作権に関わる契約を、だれがどのように取り交わしているのかを、公にする手段は無いと考えるべきだということです。ですから、何か著作権にまつわる契約を結ぶ時には、相手方に、同じ著作権にまつわる他者との契約があるかないかをしっかり確認する必要があります。この確認を曖昧にしたり、逆に相手方に明示しないと、今回のような事件に発展しかねないということです。

 

 

著作権登録の実態

 今回の事件でも、文化庁における著作権登録の話が出てきましたが、では登録の実態はどうなっているのでしょうか?実は、著作権登録の制度は、ほとんど使われていません。これは、著作権の発生が登録にはよらないからです。つまり、特許や商標とは違って、登録をしなくても著作権が生じるからです。著作権登録の場合、権利関係の登録もありえますが、一般的には著作者の実名登録や日付の登録としての機能かと思います。このような状況から、著作権の登録を過信するのは禁物です。

 

契約を結ばずに進めるケースが多いのですが・・・

 今回の事件では、いったん契約をしっかり結んでいたにも関わらず、その契約に違法性があってトラブルになったわけですが、だからといって『契約は結ばなくてもよい』、というものではありません。正直言って、著作権のトラブルの大多数が、契約を結ばないことで生じたものだと私は感じています。つまり、著作権に関しては、「契約無しではビジネスはできない!」と考えていただきたいと思います。目に見えない権利だからこそ、曖昧にしないで、契約書で見える化していただきたいのです。