知的財産:Vol.39 「ジャイアンツの原」は商標登録できるのか?

知的財産
福島県の企業が、日本酒などを指定商品として「大隈重信」を商標とする商標登録出願を行いました。これに対し、早稲田大学が異を唱える報道がされ、出願人はその商標登録出願を取り下げることにしたようです。一方で、既に歴史上の著名人の名前が商標登録されているケースがあります。歴史上の著名人の名前を、本当に独占できるのか、説明していきたいと思います。

そもそも、歴史上の著名人の名前は、商標登録できるのでしょうか?

 他人の氏名の商標の登録の可否を定める商標法の定めとしては、商標法4条1項8号で、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」、は登録を認めない旨の定めがあります。一見すると他人の氏名ですから、他人では商標登録できないように見えます。しかし、審査基準という実際の審査の運用としては、「他人」を存命の人に限っています。つまり、どんなに著名な人の名前でも、死んでしまえば他人が商標登録を受けることができるというのが現行法です。ただし、商標法において拒絶できないことについては、特許庁で見直しのための検討が始まっているようです。

 

実際に歴史上の著名人の名前の商標登録は存在するの?

 例えば、「福沢諭吉」が日本酒等を指定商品として商標登録されています。他にも、何人もの歴史上の人物の登録があります。一方で、存命の著名人の名前を商標とそして商標登録出願をして、商標法4条1項8号違反で登録されなかった例としては、「青木功」などがあります。

他は、著名な略称として登録されなかった例としては「ジャイアンツの原」や「ジャイアンツの江川」といった出願もあります。一方で、最近お亡くなりになった歌手の名前を勝手に登録されないか心配なご遺族の方がいるという話も、最近、何件か聞いています。

 

 

 

 

商標登録されてしまえば、自由に使えるのか?

 これは、法律云々の問題というより、最終的には消費者の目線で考える必要があるかと思います。歴史上の著名人の名前を使うことにより、他人の名声にただ乗りしたり、名声を毀損したり、名声を希釈させたりするようでは、競業秩序は保たれませんし、消費者の利益が損なわれることになります。例えば、中小企業が、その歴史上の著名人の名前を使うことで大学があたかもその商品を出していると思わせるような商売をすることは、消費者の利益に反することになりかねないということです。ですから、歴史上の著名人の名前を使う場合、最大限の配慮をする必要があると思います。

 

商標登録されてしまえば、完全に独占できるのか?

 日本酒で商標登録された場合、他人は、日本酒の瓶のどこにもその歴史上の著名人の名前を書けないかというと、決してそんなことはありません。例えば、ラベルのお酒の説明などの表記中で、歴史的事実の説明として歴史上の著名人の名前を書くことは、事実の表示であって、商標の使用にはあたらないと解されます。ですから、商標権を取得したからといって、全ての使用が制限されるわけではありません。あくまでも、商品名だけで考えた場合の独占なのです。

 歴史上の著名人の名前を商品名につけたいと考えていらっしゃるなら、いろいろな条件や制限を十分に検討した上で、その名前を使うか否か、考えていただきたいと思います。