知的財産:Vol.43 特許出願して損をすることがある!?

知的財産
最近、大手メーカでも、自社の優れた技術を特許出願しないという戦略を検討しているというニュースを聞くことがあります。特許出願大国の日本において、これはいったどういう事情によるのでしょうか?その状況を捉えつつ、出願すべき技術や出願すべきではない技術(主にノウハウや技能)を説明します。

産業財産権の制度趣旨

 そもそも、特許制度をはじめとする産業財産権制度は、優れた技術の公開を促し、その公開した技術の適正な利用により、より一層産業が発展を目的にしています。技術を公開した者には、その対価として一定期間の独占が認めらます。産業発展の観点に立てば、自分たちの新しい技術を特許出願することは、我が国の産業発展に寄与するわけで、必要不可欠な事業行動と言えます。

 

 

 

 

制度の課題

 しかし、その一方で、インターネットの発達という急速な情報のボーダレス化及び情報の瞬時取得性から、理想論だけでは解決できない課題が生まれています。現行の制度では、特許出願後18ヵ月を経過すると、出願の内容が公開されます。その公開内容を見た者が、模倣するケースが増え、その模倣製品が海外から、日本国内に持ち込まれるケースが急造しているようです。つまり、特許出願をして公開されたばかりに真似されてしまったと言えてしまうようなケースが出てきているのです。

自社技術を守るために

 では、自社技術を守るために一切出願をすべきではない、としてしまって良いのでしょうか?決してそんなことはなく、積極的に出願を行うべきであることには今まで通りだと思います。現に、「特許取得済み」「特許出願中」が付された広告やTVコマーシャルが増えているのは、皆さんもお気付きだと思います。要は、出願すべき技術と秘匿すべき技術(主にノウハウや技能)との選別をしっかりする必要があるということです。では、それぞれについて考えてみましょう。

 

秘伝として守るべきもの

  特許出願しないほうが良いものとはどんなものでしょうか。具体的な例で言えば、コカコーラの味に類するようなものです。製造方法や調合方法や調合量等の、技術と言うよりもノウハウ・技能といった部類のものは、出願に馴染まないでしょう。実際に、侵害が発生したとしても相手方の製品の分析から侵害の証拠を見つけ出すことは難しく、相手の工場に乗り込んでいくわけにもいかないというリスクもあります。秘伝の味や秘伝の製法を守ることは、文化を守ることでもあり、大切な取り組みだと思います。たとえ工場で大量に生産され得て特許出願が可能なものでも、例えば、ケンタッキーフライドチキンのスパイスの調合や、うなぎパイの生地や表面に塗られたシロップの調合なども出願には馴染みにくく、秘伝中の秘伝だからこそ意味があるのだと思います。また、技能・ノウハウを守るという意味では、例えば、自動車板金加工のための金型の製造方法等も、秘技として守られています。

 

公開し産業貢献に期すべき技術

 一方で、動作や構造に特徴があり、その技術が外見的に容易に把握できる新しい技術は、積極的に特許出願すべきです。もちろん、このような技術を相手が模倣すれば侵害の有無は明確で、立証も極めて容易ではありますが、それ以上に出願に大きな意味があります。特許出願や特許権を取得していることは、新しい技術を積極的に考え出し産業発展に寄与していることを、顧客に強くアピールできます。また、積極的に製品に出願の旨などを明示することで、侵害に対しての抑止力になります。特許権を担保に、金融機関からお金を借りることも可能な時代になっています。

 

重要なことは

 既にお気付きだとは思いますが、肝心なのは、自分たちの技術やノウハウや技能を、どのような理念で守っていくかを明確に定めることです。そして、その理念にそって保護手段を選び、適正に保護を進めていくということです。単に自社の利益を守るに留まらず、事業者の社会的責任として捉え、行動する必要があります。

 特許出願に悩んだら、専門家に相談されることをおすすめいたします。採るべき道はどちらなのか?じっくり考えてください。