Vol.13 映画購入の現場でのかけ引きとロジック

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
前回は、映画祭に おけるマーケットの紹介をしたが、実際の映画購入とは、一体どういうロジックで動いているのか?私が「映画を買う業務をしています」というと、必ず聞かれ るのがこのロジックの部分である。さほど難しいロジックで動いているわけではないのだが、映画という特性上、神秘的に捉えられがちなのも事実。今回は、買 い付けのロジックに迫りたい。

 

100万円の映画が1億円で売られる実態

前述のマーケットで「この作品を買いたい!」というタイトルに運良く巡り合ったとしよう。そんなラッキーなあなたは、まずは権利所有をしている セラーに電話をして、ミーティングのセットをしなくてはならない!そして、ミーティング現場で実際の交渉が始まるのだ。

 大抵の場合は、予測されていた値段とのズレがあるので、「アスキングプライス」(希望値)を教えてもらうことから始まる。、この金額は あくまでも売り主側の希望値であり、かなりの確率でふっかけられることが多い。例えば、このトロント映画祭でもニュージーランドのセラーが、羊が人々を襲 うというチープなB級どたばたホラーを出していたが、このアスキングプライスは1億円であった。(おそらく適正価格は100万~200万といったところ) このケースは大袈裟な話だが、交渉の可能性があるのが、このアスキングプライスである。

日本のバイヤーの多くは、最初のアスキングプライスで、購入の意志を決定することが多い。まず作品として映画館にかかる可能性があるこ と、そして映画館での興行売り上げがどれぐらいを想定出来るか?そしてDVDなどのセカンドラン(二次流通)など、日本でのビジネスシミュレーションを行 う。ビジネスシミュレーションを通して算出した日本側の指し値を提案し、その数字がかけ離れていた場合は、交渉が決裂することが多い。双方の差が近く、お 互いに交渉可能な範囲であれば、まさしくセリのようにお互い譲歩可能な金額の言い合いとなるのだ。

マネーゲーム

 映画買い付けのおもしろさは、自分が「これだ!」と思った作品に、複数 の異なるバイヤーが値段を差し始めた瞬間である。この場合は、高級本まぐろのセリと同様に、価格の高騰が始まる。セラー側もより高い金額で売ろうとする し、バイヤー側も指し値を可能な限り上げて、マネーゲームに突入する。今回のトロントも、とある音楽作品がこのマネーゲームに突入していた。競り上がった 値段についてや、果たしてビジネスとして買い値を回収できるのか、どうか?マネーゲームから脱落したバイヤー、そしてそもそもマネーゲームに参加していな かったバイヤーらの話題のネタになるのが常である。

 日本のバイヤーがよい映画をしっかりと買い付けていれば、日本の映画ファンの目に触れる可能性が高まるわけだ。そういう意味では、私は 値段が高かろうが安かろうが、私は大満足なのだった。

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