資金調達の成功事例集 Vol.03 金融機関との上手な付き合い方とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
こんにちは。資金調達コンサルタントのヒガシカワです。金融機関から資金調達を行うにあたり、一番必要とされるのが、「金融機関との良好な関係の構築」です。今回の事例(Vol.3~Vol.4)では、その関係を構築するための答えがふんだんにちりばめられています。これを読めば、金融機関は皆様の敵ではなく、味方であるということがよくわかっていただけるだろうと思います。

創業当初から資金調達が成功

今回は、企業の情報システム部門向けにアウトソース事業を行っている、モジュレ(株)を設立した松村明さんのケースです。モジュレは、さまざまなサービスを提供し続けた結果、創業後7年経った現在、クライアント数は上場企業数社を含む30数社、売上20億円、社員数47名と順調に成長を遂げ、次なる飛躍の為に2006年6月20日には株式上場(IPO)も行いました。

さて、そんなモジュレですが、代表の松村さんは、起業に至った経緯について、「『今までの仕事だけではなく別の経験も積みたかったこと』、『勤めていた会社では本来やりたいITサービスができなくなってきたこと』、『独立していた優秀な技術者からマネージメントをして欲しいと頼まれていたこと』、そして『一緒に参加しても良いと言ってくれた数名の仲間がいたこと』等、挙げれば多くの理由がありますが、『まぁ、なんとか食っていけるかな?』と考えてしまった事が一番大きな動機です。この事業計画もない軽いノリが、後でさまざまなプレッシャーになり跳ね返ってくる事を、私は当時35歳にもなっていたにも拘らず理解していませんでした。』とおっしゃっています。

1999年9月に松村さんは手元にあった300万円を資本金に有限会社を立ち上げ、その後本格的な営業開始と定めた9ヶ月後の2000年6月1日を目指して、色々な準備を開始しました。勿論、その準備の中で一番重要な事が資金集めである事は言うまでもありません。現在は複数の金融機関と非常に良好な関係を構築しているモジュレですが、創業当初の資金調達では金融機関には一切頼りませんでした。名もないこれから営業開始する企業が融資の依頼をしても、断られるだけだろうと考えたからだそうです。松村さんが代わりに取った方法は個人の繋がりを頼り、作成したモジュレのビジネスプランに出資してくれる方を探す事でした。結果、運や出会いに恵まれ、折しもITバブルが弾けた直後、創業から5ヶ月後の 2000年2月頃には、十名程度の個人の方々から約3000万円の出資を得ることが出来ました。この出資者の多くは中小企業の経営者の方々で、また一部は大企業で活躍している優秀なビジネスパーソンでした。

「私が起業前に知っていた方は僅か2名だけで、残りはすべて最初の2名の方からのご紹介で輪が広がっていったのです。出資者の多くはビジネスプランよりも個人の能力や信頼関係を大切にされていた事を今でも鮮明に覚えています。『日本にはエンジェルはいない』とよく言われますが、私はこの資金調達を通して日本にも本当の意味のエンジェル(起業する後輩に出来る範囲で援助する気持ちのある方々)がいるのだと云う事を知ったのでした。」と松村さんは振り返ります。

 

 

ビジネスが成功する秘訣

なんとか初期資金の目処が付いたモジュレは、2000年4月1日に数名の仲間と本格的な稼動を開始しました。資本金と僅かに受注できそうな仕事の利益はすべて運転資金に当てる計画だったようですが、それでも1年半程度しか会社は持ちません。そして、それはすなわち自分の経営者としての才能や能力が劣っている証明になり、また経営者としての経験なんて皆無の自分を信じてくれた出資者の方々や仲間達の信頼をも裏切る事にもなると松村さんは考え、それから2年後の単年度黒字を経て3年後に累積黒字を達成する迄は、創業時の無計画さを埋めるべく何をしたかも覚えていない程、働いたそうです。

松村さんはビジネスについて、次のように考えています。「私はビジネスというのはお客様に何かを評価頂いてその対価や感謝の代償としてお金をいただく事だと考えており、どんなにアナリストやコンサルタントに優秀だと認めてもらったビジネスモデルでもお客様に売れなければ成立しません。逆を言えば、お客様に売れるビジネスであれば、世間の評価なんて最初はどうでも良いではないでしょうか?その意味で初期2~3年の多くの時間を大手企業様からのITサービス契約の獲得に充てました。
また、私はベンチャー経営者の仕事の多くの時間はビジネスをどう成功させるか?ではなく、計画とおりに行かなかった場合にどうリカバリーするか?の計画策定と実行可能な段階迄の事前準備に充てられるべきだとも考えています。失敗した時にどのように会社を継続させるのかは、ベンチャー企業の場合、経営者がひとりで決定し実行していかなくてはなりません。要するに失敗をリカバリーする計画と手段があれば、失敗しないのですから結果として成功すると云う事です。」

松村さんは、失敗しないために、個別の対応策は勿論のこと、失敗しても立ち直るだけの時間的余裕、すなわち資金的な余裕を持つ事が経営的には大切だと考え、創業後、営業拡大以外に取り組んだ事が、金融機関への融資依頼とベンチャーキャピタルへの出資依頼でした。

次ページでは、松村さんが金融機関から実際に融資を受けた際のポイントをご紹介します。

 

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