Vol.13 IPOを目指す社長は設立段階から緻密な資本政策を

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
今回から、具体的 に上場準備に向けて検討が必要な項目を確認して行こうと思います。今回のテーマは「資本政策」です。「資本政策」とは、株主構成や各株主の持株比率、一株 あたりの金額などを計画するシミュレーションをいいます。「資本政策」は監査法人や主幹事証券会社と契約をする前から検討が必要な項目で、会社設立段階か ら綿密な戦略が必要です。しかしながら、設立当初の会社には財務的なノウハウを持ったメンバーがいないことが多く、後々取り返しのつかない「資本政策」を 組まれている会社が多いのが現状です。そこで、「資本政策」を立案する際に注意が必要となる項目を、確認して行こうと思います。

資本政策の立案方法

 資本政策を検討するタイミ ングとしては、株式公開を目指すタイミングでは十分ではなく、会社設立当初から慎重に検討していく必要があります。資本政策は利益計画と密接に関連してき ますので、事業計画書や中期経営計画を作成する際に、利益計画と資本政策を同時に立案するのが望ましいです。

 資本政策を立案する際に検討 すべき事項は、1.どのような株主を安定株主とするのか、2.その安定株主にどの程度の比率で株式を割当てるのか、3.役職員のインセンティブプラン、 4.上場時の公募・売出によりどの程度の流動性を確保するか、5.一株あたりの投資単位(株価)をどの程度にするか、です。以下、各項目を詳細にみていき ます。

 

1.安定株主対策:どのような株主を安定株主とするのか

  資本政策を検討する際に一番重要なのは、安定株主対策です。株式公開するということは、誰でも会社の株式を買えるようになるので、経営の安定化のために 「安定株主対策」の検討が必要です。昨今のM&Aブーム、は次々に買収防衛策(ポイズンピル)を導入しています。しかし、証券取引所は投資家保護 の観点から、買収防衛策を講じた新規公開会社には慎重な審査を行うというスタンスを取っています。これは、新規公開会社の経営陣、らの保身のために買収防 衛策を採用し、新たに株主となる一般投資家の株主権を損なう可能性がある、という考えに基づいています。

 そのようななか、新株予約権など を用いた買収防衛策よりも有効な手段は、安定株主で一定数以上(発行済株式総数の過半数もしくは3分の2以上など)の株式を保有することです。ここでいう 安定株主とは、会社の株式を上場後も長期的に保有し、経営陣の採用する経営方針などに理解のある株主をいいます。

 では、安定株主にはどの ような人・会社が該当するのでしょうか。一般的に、安定株主として望ましい順位は以下のとおりです。

(1)創業者・オーナー

(2) 役職員

(3)金融機関(銀行・証券会社・保険会社)

(4)大手取引先

(5)ベンチャーキャピタル、取引先(新 興企業)

上記の安定株主候補を一つずつ見ていきます。

 2番目の役職員は、継続して会社の経営や業務に協力してくれている間 は特に問題はないのですが、退職した場合には当初役職員として期待していた役割ではなくなると同時に、外部のいち個人株主となってしまいますので、留意が 必要です。

 3~5番目は外部の法人ということでひとくくりにできます。外部の法人で留意する点としては、ベンチャーキャピタルは事業その ものが未公開企業に投資して、その株式をIPOやM&Aで売却することが目的ですので、そもそも長期保有は期待できません。また、経営陣の意思と は関係なく、投資資金を回収するために、早期にIPOするよう迫ってくることもあります。よって、すべてのベンチャーキャピタルがこのようなスタイルでは ありませんが、出資を受ける際には投資資金の回収方針を確認しておく方が良いです。

 取引先のなかでも新興企業の場合は、自らの業績動向に よっては投資先の株式を早期に売却して、益出しをすることがあります。逆に、利益規模が数百億円あるような大企業であれば、数億円の売却益を目当てに株式 を早期に売却する可能性が低いといえます。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める