会社経営に必要な法律 Vol.48 マルチ商法とネズミ講は何が違う?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
最近、マルチ商法 を行う会社に業務停止命令が出されたり、マルチ商法を装ってネズミ講行為を行った会社の元役員らが逮捕されるなどの事件が増えています。そこで、今回はマ ルチ商法とネズミ講の違いや、法律により規制されている商取引について解説し、また、起業家として留意すべき事項について解説します。

[ニュースの概要]

48-22009年11月、消費者庁は、仮想空間で不動産ビジネスを行うマルチ商法会社に対して、会員を募る際に違法な行為を行っていた として、6ヵ月間の業務停止を命令しました。同社については国民生活センターなどに約1000件の苦情が寄せられていたようです。
また、2010 年1月には、携帯電話充電器をマルチ商法で販売して約187億円の売り上げを挙げた会社の経営者ら8人が、虚偽の説明で購入者の解約を妨害したとして、特 定商取引法違反(不実の告知)容疑で逮捕されました。さらに、同月、インターネットのポータルサイトをつくるる事業に充てるとして、若者を中心に端末機代 や登録料名目で7億円以上を集めた大阪市の端末機販売会社の元役員ら4人が、無限連鎖講の防止に関する法律違反容疑で逮捕。同社を巡っては京都府消費生活 安全センターなど、全国で400件の相談が寄せられ、大阪、兵庫、京都の3府県が合同で6ヵ月の業務停止の行政処分を2008年3月に実施し、同年4月に は弁護士が京都府警に告発していました。京都府警では、同社がネズミ講行為を隠すために端末機などの商品を介在させ、合法のマルチ商法を謳ったものとみて いますが、元役員らは「物があるのでネズミ講には当たらないと思っていた」などと供述し、容疑を否認しています。
 

[法律上の問 題]

1 マルチ商法とネズミ講の違い
マルチ商法とは、「マルチ・レベル・マーケティング・プラン」の略称で、販売組織がピラミッド状に 多重階層に発展していく組織販売のことをいいます。また、これはピラミッド・セリングとも言われています。特定商取引法では、消費者保護の観点から、この ような組織販売については、「連鎖販売取引」として規制しています。
他方、ネズミ講とは、「無限連鎖講」のことで、金品を支払って組織の会員とな り、自分の下に2人以上の会員を獲得することによって、自分が会員となるために支払った金品以上の利益が挙がる仕組みの金銭配当組織のことをいいます。無 限連鎖講は、終局において破たんすべきものであるにもかかわらず、関係者の射幸心をあおり、多数の加入者に経済的な損失を与えるにいたるものであるとし て、無限連鎖講の防止に関する法律で禁止されています。無限連鎖講を開設・運営する行為のみならず、無限連鎖講に加入することや、加入することを勧誘する こと、また、これらの行為を助長する行為も法律によって禁じられています。
マルチ商法とネズミ講の違いは、ネズミ講が金品配当を目的としているの に対して、マルチ商法は商品を介在させている点です。マルチ商法自体は、法律で禁止されたり、開業規制されたりするものではありませんが、ネズミ講は、犯 罪行為として法律で禁じられています。そのため、業者によっては、商品取引を介在させることによって一見商品販売組織であるとカモフラージュするケースも ありますが、商品販売の実態が認められない場合には、ネズミ講とみなされる可能性があります。

2 特定商取引法による規制
次の条 件を満たす商取引は、特定商取引法上、連鎖販売取引として規制を受けます。なお、取引の形態については特に制限はなく、再販売、受託販売、販売のあっせん のいずれであっても規制の対象となります。
48-1表

マルチ 商法は、通常、連鎖販売取引として特定商取引法の適用を受けますが、特定商取引法では、消費者保護の目的から、連鎖販売取引について、次のような規制を設 けています。これらの規制に違反すると、監督官庁による処分を受けたり、罰則の適用を受けたりすることになります。
48-2表

[起業家として留意すべき事項]48-1「ネットワークビジネスに参加しませんか? 誰にでもできて、確実に儲かる話だから、説明会だけでも参加してみませんか?」
起 業を目指す方の中には、友人や知り合いからこんな誘いを受けたことがある方がいらっしゃるかもしれません。しかし、冷静に考えてみれば、「誰にでもできる ビジネス」や「確実に儲かるビジネス」など、あるはずがありません。ビジネスをすることには、通常、初期投資が発生しますし、当然のことながら、損失を被 る危険が伴います。また、ビジネスで利益を挙げるためには、商品やサービスが良いものであることや価格が適切であることはもちろんのこと、ビジネスに参加 した当人のセールス能力や経営手腕も問われることになります。
 他者が勧めるビジネスに参加しようとするのであれば、そのビジネスの仕組みや具体 的な内容をしっかりと見定めてから、参加するか否かを判断するべきです。対象となる商品やサービスの内容、具体的活動の内容や経済的負担、収益予測やその 計算方法、本部となる組織がある場合にはその組織に関する情報などについて、自ら調査・検討したうえで、参加の可否を判断することが必要です。あいまいな 情報を鵜呑みにしてビジネスに参加することは、とても危険なことです。なぜなら、いったんビジネスに参加して取引を開始すれば、その取引から発生するトラ ブルに関する責任は、自らが負担しなければならないからです。騙されたといって責任逃れしたり、負担を免れたりできる訳ではありません。仮に、違法なビジ ネスであった場合、刑事責任を問われることにもなりかねません。
 違法性が疑われるビジネスの場合には、特に注意を要します。弁護士などの専門家 にビジネスの仕組みや対象となる商品やサービスなどの具体的な内容について説明して、事前に確認してみるべきでしょう。参加しないと決めた時は、たとえ相 手が友人や知人であったとしても、はっきりと断ることが大切です。

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