会社経営に必要な法律 Vol.50 NHK受信料不払い、強制執行で使われる支払督促とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

NHKが法的督促をした後も受信料を払わない世帯や事業所に対して、強制執行を行う方針を固めたとのことです。そこで、今回はこのニュースを取り上げ、未払い債権を回収するための法的手続きについて解説し、起業家として留意すべき事項について解説します。

[ニュースの概要]
NHK受信料の支払拒否・保留者は2005年11月末に128万件に達したことから、2006年11月、NHKは東京都内の33世帯について、東京簡易裁判所に法的手続きである支払督促の申し立てを行いました。その後も再三の支払要求に応じない悪質なケースを中心に支払督促の申し立てを全国的に行い、今年3月末時点での総数は841件。うち、506件は支払に応じ、162件は異議が申し立てられました。すでに76件が強制執行の対象となっていますが、NHK営業局は、「話し合いで支払ってもらえるよう説得するのが本来のあり方」として、慎重に手続きを進めていく方針を示しています。
NHK広報局によれば、受信料の不払いをめぐる訴訟は、これまで全国の簡易裁判所で27件、地方裁判所で1件の判決が出ており、いずれもNHK側の主張が認められてきました。ただ、2010年3月19日には、札幌地方裁判所で初めてNHK側の請求を棄却する判決が出ており、今後の動向が注目されます。

[法律上の問題]
1 支払督促とは
 債務者が、貸金、立替金、賃金などを支払わない場合に取り得る法的な手続きとして、民事調停の申し立てや支払督促の申し立て、訴訟提起などがあります。
民事調停とは、裁判所をとおしての話し合いのことです。債務者に任意の履行を促すものであることから、債務者に履行するつもりがないときには、民事調停で紛争を解決することはできません。
また、訴訟を提起する場合は、簡易裁判所または地方裁判所に対し、訴訟手続きに則り、訴状を作成し、紛争になっている金額に応じて収入印紙を貼付し、証拠となる書類や郵券(訴状等を相手方に送付する際に裁判所が使用する郵便切手のこと)と共に裁判所に提出します。紛争解決までには、通常、複数回の訴訟期日が指定され、期日には自らまたは代理人を立てて、裁判所に赴く必要があることから、訴訟によって紛争解決を図ろうとする場合には、手間も時間も費用も、それなりにかかります。
これらの手続きに対して、支払督促は、債権者の申し立てだけに基づいて裁判所書記官が行う略式の手続きです。紛争になっている金額にかかわりなく、金銭の支払いを求める場合に利用することができ、訴訟の場合の半額の手数料と切手代だけで、申し立てをすることができます。また、書類審査のみで、訴訟の場合のように、裁判所に赴く必要もありません。
 債権者の申し立てに対して一定の期間内に債務者から異議の申立てがなされなければ、債権者は、仮執行の宣言(仮に執行手続きをすることの許可)を得て、直ちに強制執行の手続きに移ることができることから、早期に紛争を解決することができます。ただし、債務者から異議の申し立てがなされた場合には、請求の額に応じて、簡易裁判所または地方裁判所での訴訟へと移行することになります。

2 支払督促の手続きの流れ
支払督促の手続きの概要は、次のとおりです。
(最高裁判所の支払督促手続きに関するパンフレットの引用。筆者による変更が一部加えられています)

*1 申し立て先は、相手方の住所地の裁判を受け持つ簡易裁判所の裁判所書記官です。
*2 申し立て先は、支払督促と同じ。申し立て期間は、申し立てに対する相手方の異議申立期間経過後30日以内です。
*3 異議申し立ての期間は、支払督促または仮執行宣言付支払督促の受領後2週間以内です。
*4 請求額が140万円以下であれば簡易裁判所で、140万円を超えるときは地方裁判所での手続きとなります。

[起業家として留意すべき事項]
 起業家として、日々の経済活動から生ずるさまざまな債権をきちんと管理し回収することは、経済活動を維持していくうえで、とても重要なことです。債権回収の方法は多岐にわたりますが、法的な手続きとしては既述のとおり、民事調停や支払督促、訴訟手続きが挙げられます。
中でも、支払督促は、簡易・迅速、かつ低廉な費用で利用でき、仮執行宣言付支払督促を得ることができれば、債務を履行しようとしない相手方に対して強制執行することが可能となり、訴訟で勝訴判決を得たのと同様の効果を得ることができます。
たとえば、システム開発会社であるA社がB社からシステムの開発案件を受注し、契約締結後、A社はシステムの開発に取り組み、これを完成させてB社に納入。検収も無事完了したので開発代金の請求をしたところ、A社の度重なる催促にもかかわらず、B社が代金を支払おうとしない場合。あるいは、株式会社C社がDさんと金銭消費貸借契約を結び、金10万円を年利18%で貸し付けたところ、約束の返済期限が来てもDさんが一向に利息・元金とも返済してくれないというような場合には、この支払督促の手続きを利用することが可能です。
ただし、支払督促の手続きを利用するに当たってはいくつか留意すべき事項があります。

 まず、支払督促は金銭的債権に関する紛争についてのみ利用可能です。また、書類審査のみの手続きであるため、当事者間の権利義務関係が複雑な事案や、口頭の約束のみで契約書などの証拠となる書面などが一切なく、相手方の債務の存在が必ずしも明確ではないような場合には、適しません。債務の存在やその内容に争いがあり、相手方から異議がでる可能性が高いような場合には、最初から訴訟を提起することがよいと思われます。
支払督促に対して異議が申し立てられた場合、裁判管轄は相手方の所在地となりますので、債務者が遠隔地に在住する場合、債権者が訴訟期日の度に遠くの裁判所まで赴かなければならなくなります。また、相手方の異議が出てから訴訟に移行するよりも、最初から訴訟を提起した方が、時間の節約にもなります。支払督促に適した事案かどうか迷った場合には、事前に弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。
 
既述のように、債権回収は、法的手続きによることが可能です。ただ、判決や支払督促により強制執行することが可能となっても、相手方に財産がなければ、結局は回収することができません。また、実際に、回収できるケースは少ないと理解していただくことがよいと思います。
債権回収において大切なのは、相手方に債務不履行が発生してしまってから、時間や労力やコストをかけて回収に取り組むことではなく、取引関係に入る前の確認、すなわち、相手方の支払意思や支払能力について事前に調査し判断することであるということを忘れないでいただきたいと思います。

 

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