会社経営に必要な法律 Vol.59 クーポン共同購入サイトの活況に冷や水

会社経営に必要な法律

最近、インターネットで商品・サービスを大幅な割引価格で購入できるクーポン共同購入サイトが活況を呈していますが、昨年末、クーポン共同購入サイトでは最大手であるグル―ポン・ジャパンが運営するGROUPONで販売されたおせち料理について、配達遅延や「見本より劣る」などの苦情がユーザから殺到し、問題になりました。そこで、今回はこのニュースを取り上げ、クーポン共同購入サイトに関する法律上の問題について解説し、また、ベンチャー企業の経営者として、留意すべき事項について解説します。

ニュースの概要

食卓イメージ2010年末、GROUPONで株式会社外食文化研究所のバードカフェが提供する「謹製おせち」 21,000円が半額の10,500円のクーポンとして500セット限定販売されたところ、12月31日の昼頃から、配送が遅延している旨の連絡や、商品について品数や量、盛り付けなどが写真や事前説明と異なるなどの苦情が同社のホームページ経由のメールでお問い合わせ窓口に寄せられました。
同社は、かかる事態を受けて、翌1月1日、同社のホームページ上で謝罪文を公表し、購入者に対しては、全額返金のうえ、5,000円相当のお詫びの品を用意することをメールで連絡しました。
また、1月5日には、グル―ポン・ジャパンは、「バードカフェ『謹製おせち』についてのお詫びとご報告」として、今回の問題が発生した原因が、商品の提供元における品質管理、製造管理などが適切であるか否かの見極めが適切にできていなかったことなどにあったとし、今後の対応として、クーポン提供者に対する事前審査を厳格化すること、及びクーポン購入者専用窓口を設置することなどを発表しました。
さらに、1月16日には、米国GROUPON本社のCEO(最高経営責任者)であるアンドリュー・メイソン氏が、本件について謝罪する動画をYouTubeで配信し、今後は事前審査を厳格化する方針を示しました。
この問題に関して、消費者庁が株式会社外食文化研究所に対して調査を行ったところ、調査の結果、「キャビア」と表示されていたのは実際にはランプフィッシュの卵であったこと、「フランス産鴨」は岩手県産であったことが分かりました。この他にも、「ニシンの昆布巻き」にはワカサギが使用されていたこと、「カマンベールチーズ」は実はクリームチーズであったことなどが判明しました。また、価格についても、日常的に販売実績のない価格を勝手に設定し、「通常の半額」と表示して安く見せかけていたとのことです。 消費者庁は、2月9日、同社に対し景品表示法違反について改善を求める措置命令を出す方針を固めました。

法律上の問題

(1) 景品表示法上の問題
景品表示法は、消費者が適正に商品・サービスを選択できる環境を守り、消費者の利益を保護するため、不当な表示や過大な景品類の提供を規制しています。

「謹製おせち」問題のように、ランプフィッシュの卵を「キャビア」と表示するなどのように、実際のものより著しく優良であると消費者に誤認させるような不当な表示は、「優良誤認表示」として景品表示法第4条第1項第1号で禁止されています。

また、商品・サービスの価格や取引条件について、実際のものより著しく有利であると消費者に誤認させる表示や、競業他社のものよりも著しく有利であると誤認させるような表示は、「有利誤認表示」として景品表示法第4条第2項第2号で禁止されています。

有利誤認表示としてよく問題となるのが「二重価格表示」です。クーポン共同購入サイトでは、「通常価格」と「値引き後の価格」を表示して、商品・サービスが割安であることを示して販売するのが一般的です。しかし、「謹製おせち」のように、過去に販売実績のない価格を「通常価格」として設定して、それが日常的な販売価格であるかのようにみせかけたり、また、「通常価格」を日常的な販売価格よりも高く設定して、日常的な販売価格を「値引き後の価格」として表示したりすることは、有利誤認表示となり違法です。

価格の問題については、今回の「謹製おせち」の他にも、クーポン共同購入サイトでクーポンを購入したところ、店舗ではクーポンメニューとほぼ同一内容・同一価格のものが、通常メニューとして提供されていた、クーポンメニューと同一価格の通常メニューの方が豪華だった、などのトラブルも生じています。

(2) 表示についての責任の所在
クーポン共同購入サイトの利用規約には、サイト運営者は、クーポン提供者がユーザの希望を満たす商品・サービスを提供すること等について責任を負わない旨が記載されていたり、クーポンに関する情報、取引状況、販売期間、価格、クーポン提供者に関する情報その他の情報について、その正確性、有用性その他一切の事項について保証しない旨などが記載されていたりすることが多いようです。
しかしながら、実際にサイト上の表示内容に優良誤認表示や有利誤認表示などの不当な表示があったことによりトラブルが発生した場合、サイト運営者として全く責任を負わないと主張することは難しいものと解されます。

不当表示がなされた場合の景品表示法に基づく処分対象となりうる表示主体としての事業者の範囲については、ベイクルーズ審決取消事件(平成19年(行ケ)第5号)が参考となります。この判例では、表示主体となる事業者とは、表示内容の決定に関与した事業者をいい、①自らもしくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者、②他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者、③他の事業者にその決定を委ねた事業者が含まれるとされています。

実際に表示主体となるか否かについては、個々の事案ごとに判断されることになりますが、この判例に基づいて判断された場合、商品・サービスを販売するクーポン提供者の責任が問われることは当然のことで、また、サイト運営者が責任を負うケースも少なくないと思われます。
ユーザからのクレームやトラブルが増加する中、自社サイトの運営に関して、クーポン提供者の審査基準の見直しを行ったり、掲載基準や価格について専門部署を設置して審査する仕組みを作ったりするサイト運営者が増えています。また、一部の運営者らが集まり、業界団体を立ち上げようとする動きもあるようです。

ベンチャー企業の経営者として留意すべき事項

ハンバーガーイメージクーポン共同購入サイトでのトラブルとしては、今回のGROUPOの他に、某ハンバーガーショップの事例が報道されています。このハンバーガーショップでは、店舗の売上向上と知名度のアップを目的としてクーポン共同購入サイトのクーポン提供者となりました。しかし、サイト運営者との交渉の中で、もともと予定していた販売枚数を大幅に上回るクーポンを発行することになり、実際にクーポンが販売されたところ、連日、予想をはるかに上回る数の顧客が来店し、店舗スタッフが次第に疲弊し、サービスレベルが低下するなどして、顧客からのクレームが急増する事態となってしまいました。そこで、このハンバーガーショップは、このままでは店舗の評判を落とすことにもなりかねないと判断し、最終的にクーポンをキャンセルして返金することを決めたとのことでした。

長引く不況の中で、クーポン共同購入サイトの活況に乗じ、クーポン共同購入サイトを利用して自らの商品・サービスの売上向上を図ろうとすることは一つの営業戦略であると思われますが、その際に、自らの供給能力についてしっかり分析・検討したうえでクーポンの発行枚数や取引条件等を決めないと、対応しきれなくなってしまうおそれがあります。また、クーポン用に、商品・サービスをにわか仕立てし、不適切な価格設定をすると、通常の商品・サービスの内容や価格との整合性がとれなくなり、クーポン購入者のみならず既存顧客の店舗に対する信用や評判まで傷つけてしまうことになりかねません。

急成長するビジネスの場合、往々にして、リスクの洗い出しがきちんとされていなかったり、ビジネスの仕組み自体が流動的で、適切に運営するためのルール作りができていない、といったことが起こりがちです。クーポン共同購入サイトのような急拡大するサービスを利用しようとするのであれば、既存のサービス利用以上に自己責任が問われることになります。自らリスクマネジメントを行わず、ただ流行に乗って売上向上を図ろうとする姿勢は大変危険なものであると言わざるを得ません。
サービスの仕組みや業界としてのルールが明確ではないことを前提として、自社のビジネスリスクを十分に検討したうえで、利用の可否を見極めることが大切であるということを、ベンチャー企業の経営者の方には忘れないでいただきたいと思います。