会社経営に必要な法律 Vol.69 DVDレンタル『ゲオ』3店舗、盗品買取容疑で家宅捜索

会社経営に必要な法律

 東証1部上場のゲオホールディングスが展開するDVDレンタル大手ゲオの店舗で、万引きされたゲームソフトなどの買取が行われた疑いが強まったとして、警視庁少年事件課などは、平成23年12月19日、盗品等有償譲受け容疑で、都内のゲオの3店舗を家宅捜索しました。今回はこのニュースを取り上げて、古物営業に関する法的規制について解説し、また、ベンチャー企業の経営者として留意すべき事項について解説します。

ニュースの概要

家宅捜索を受けたのは、大田区の池上店と平和島店、世田谷区の駒沢店の3店舗で、警視庁少年事件課によれば、これらの店舗は、平成23年7月から8月にかけて、川崎市の17歳から19歳の少年3人(窃盗容疑で逮捕)が持ち込んだゲームソフトなど53点を4回にわたり計約16万円で買い取った疑いがもたれています。少年らは、家電量販店で万引きしたゲームソフトなどを都内や神奈川県内のゲオの店舗計22店舗に47回持込み、約135万円で売却したとのことです。少年らは、未使用の商品であることを示す透明フィルムに包装されたままのゲームソフトを店舗に持ち込んだ際に店員から指摘を受けましたが、少年らがその場でフィルムを剥がすと、店舗ではそのまま引き取ったとのことです。少年事件課では、盗品であることを認識したうえで買い取ったものとみて、盗品等有償譲受け(刑法第256条)容疑で家宅捜索に踏み切りました。

盗品の買取に関しては、平成23年12月2日に、ソフトレンタル店「TSUTAYAイオンモール日の出店」が買い取ったCDなどに盗品の疑いあったのにもかかわらず警察に届け出なかった問題で、東京都公安委員会が同店に対して、中古品の販売・買取業務を2週間停止する行政処分をしたばかりです。古物営業法では、買取商品が盗品と疑われる場合は警察に届け出ることが義務付けられています。しかし、警察庁ではこの規定の遵守が徹底されていないとして、中古品販売業者への指導徹底を全国の警察に指示するとともに、業界団体に対して、盗品の流入防止への取組を強化することを要請しました。

法律上の問題

(1)古物営業法
古物営業法は、取引される古物の中に窃盗の被害品等が混在するおそれがあることから、盗品等の売買の防止、被害品の早期発見により窃盗その他の犯罪を防止し、被害を迅速に回復することを目的として、古物営業にかかる業務について必要な規制を定めた法律です。

古物とは、一度使用された物品、新品でも使用のために取引された物品、又はこれらのものに幾分の手入れをした物品のことをいいます。古物は、古物営業法施行規則により、美術品類、衣類、時計・宝飾品類、自動車、自動二輪車及び原動機付自転車、自転車類、写真機類、事務機器類、機会工具類、道具類、皮革・ゴム製品類、書籍、金券類の13品目に分類されています。今回問題となったゲームソフトやDVDなどは13品目のうちの道具類に当たります。

古物営業法では、古物の売買又は交換を業として行う古物営業に許可制度を設け、古物の買受、交換等に際して、その相手方の住所、氏名、職業及び年齢の確認を義務付けています。また、買取対象品が盗品であると疑われる場合は、警察に申告することを義務付けています。

近年の換金目的による万引き被害品の市場への流入を抑止するため、改正古物営業法施行規則(平成23年4月1日施行)では、古物商が買受を行う際の本人確認義務等が強化されています。具体的には、改正前においては、古物商は、対価の総額が1万円未満の商品を買い受ける場合には、オートバイやゲームソフトを除き、取引の相手方の確認や帳簿等への記載をしなくてもよいとさていましたが、改正後においては、書籍(単行本、雑誌、マンガ、辞書など「本」はすべて対象)やCD・DVD等(CD、DVD、レーザーディスク、ブルーレイディスク)についても、値段にかかわらず、相手方の確認や帳簿等への記載が求められることになりました。

従って、消費者が中古品取扱店でゲームソフトや書籍、CD・DVD等を売却しようとする場合には、値段に関わらず、運転免許証や保険証等の提示などによる本人確認が求められます。

(2)盗品等有償譲受け罪
盗品等の譲受けは、刑法第256条に基づく犯罪行為を構成します。

刑法第256条(盗品等譲受け等)
1.    盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2.    前項に規定する物を運搬し、保管し、もしくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

物品を盗品等と知りながら、売買、交換など有償で取得すると、盗品等譲受け罪が成立します。代金の額が決まっていなかったり、支払いが済んでいなくても、盗品等の授受が行われれば犯罪が成立します。盗品等であることの認識があれば足り、それが、どのような犯罪によって取得されたものであるか、被害者は誰であるか、いつ盗まれたかなどの詳細まで知っていることを要しません。
盗品等有償譲受け罪には、盗品等無償譲受け罪と比べ、重い刑が科せられています。これは、盗品等有償譲受け罪は盗品等の利用・処分を援助する行為を要素とし、窃盗などの犯罪行為を誘発・助長するものであることによるものです。また、盗品等有償譲受けの罪には、懲役刑と罰金刑が併せて科されます。

ベンチャー企業の経営者として留意すべき事項

中古品買取・販売業を営む店舗が増加する一方で、近隣の本屋や量販店等から書籍、ゲームソフト、CD・DVD等を万引きし、万引きした商品を中古品として店舗に持ち込んで利益を得るという犯罪行為が増えています。中古品には盗品が含まれる危険があることから、こうした盗品の売買を防止し、ひいては窃盗等の犯罪を防止する目的で、古物営業法に様々な規制が設けられているわけです。実際には、今回のゲオの店舗やTSUTAYAの店舗での盗品の買取事件のように、店舗側が盗品と認識しながら買い取るケースも少なからずあるようです。ゲオは上場企業ですし、TSUTAYAも昨年まで上場していたのですから、どちらの会社もコンプライアンス意識は高いはずです。それにもかかわらず、今回のような事件が立て続けに発生し、家宅捜索を受けたり、行政処分を受けたりしている理由として、個別の店舗および当該店舗で業務に従事する従業員にまで指導・教育が徹底されていないことが挙げられると思われます。店舗では、従業員がマニュアルに従って買取業務に当たると思われますが、現場の従業員のコンプライアンス意識が希薄であったり、盗品を持ち込む側と何らかの関係を有していたりした場合、盗品の買取が行われてしまうことは想像に難くありません。

警察が取締りを強化し、また業界団体に盗品の市場への流入防止の取組の強化が求められている中で、中古品買取・販売業を営むベンチャー企業の経営者としては、自社の店舗において盗品売買が行われることを防止するための体制を整えることが必須です。具体的には、中古品等の買取業務に携わる従業員の配置条件の見直し、古物営業法による規制内容や盗品を買取る行為は犯罪であることの周知、盗品売買を抑止するための防犯カメラの設置、中古品等の買取業務の遂行状況に対する監視体制の強化、マニュアルや規程類の見直しなどが挙げられます。

現場で働くアルバイト従業員に倫理的な行動や適切な判断力を求めることは、必ずしも容易なことではないと思われますが、従業員のコンプライアンス意識を高めるためには、経営者自らがコンプライアンス意識を高くもって経営に臨んでいる姿勢を常日頃から示し、かつ、従業員に対する指導・教育を継続的に行うことが不可欠であると思います。