会社経営に必要な法律 Vol.06 コムスン・フルキャスト事件から行政処分の実態を知る

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
昨今、コムスンの介護事業所指定打ち切りをはじめ、法律違反をした企業に対する行政処分のニュースがテレビや新聞を賑わせています。そこで、今回は、近年厳しさを増す行政庁による処分についての報道から、ベンチャー企業として何を学ぶべきかについて説明していきましょう。

1.行政処分に関するニュースの概要

・コムスン事件

 最近、もっとも世間を賑わせた行政処分といえば、コムスンの介護事業所指定打ち切りであると思います。2007年6月6日、コムスンは、8ヵ所の介護事業所において、不正の手段により介護保険法に基づく指定を受けたとして、厚生労働省により、2011年12月までの期間における介護事業所の新規および更新指定不許可の処分を受けました。

 これにより、当該期間に事業所指定の更新を迎える事業所については、廃業せざるを得なくなります。このため、コムスンの介護事業は、今回の行政処分によって事実上継続が不可能になったといえます。

・フルキャスト事件

 人材派遣大手のフルキャストは、2007年8月3日、労働者派遣法によって禁止されている、港湾荷役業務に労働者を派遣したとして、厚生労働省東京労働局から、労働者派遣事業の停止命令を受けました。これにより、フルキャスト全店は1ヵ月間、問題となった派遣を実際に行った関西3支店については 2ヵ月の間、労働者派遣事業が一切できなくなりました。

 フルキャストに対しては、2007年3月にも、労働者派遣法によって禁止されている建設や警備業務への労働者派遣を行ったとして、東京労働局から業務改善命令が出されていました。今回の事件は、この業務改善中に行われたものであったことから、東京労働局は、改善状況が確認できなかったものと認定し、今回の業務停止処分を決定したということです。

・ヴィーナス事件

 経済産業省は、2007年8月8日、ヴィーナスグループと総称される、株式会社ヴィーナス、株式会社ヴィーナスイーストジャパン、および株式会社ビーナスウエストジャパンの3社に対し、特定商取引法違反により、6ヵ月間、勧誘や新規契約業務の停止を命令しました。エステ業者への業務停止命令はこれが初めてです。

 ヴィーナスグループは、街頭で営業目的を隠して、客を店に連れ込み、客が断っても長時間に渡る勧誘を行うなど、問題のある勧誘を行っていたほか、消費者保護のために法定されている書類に不備があるなど、違反項目は12項目にのぼりました。

 

2.法律上の問題

 それぞれの、行政処分の根拠となったのは、コムスンは、介護サービス等を規制する「介護保険法」、フルキャストは、労働者派遣業を規制する「労働者派遣法」、そして、ヴィーナスは、特定の商品・サービス提供に関して、その勧誘・広告方法等を規制する「特定商取引法」です。いずれも行政法といわれ、行政庁が国民のビジネスに対して規制を行う法律です。違反した場合には、行政処分が行われますが、このうちもっとも重いものが、企業の事業継続にとって致命的ともいえる、業務停止命令です。

 

3.ベンチャー企業としての対応

 今回は、3社の問題につき取り上げましたが、全体的な傾向として、行政庁による行政処分の件数は、近年増加しています。また、処分の内容も、業務停止など、かなり厳しいものになってきています。

 例えば、経済産業省が管轄する特定商取引法に関しては、1996年から2007年の12年間の間に、年間の処分件数が、2件から46件に急増しています。また、処分の内容としては、2003年までは、「業務停止命令」は0件~2件の間で推移していましたが、2004年以降は、急激に増加し、30件近くなり、「指示」(違法行為の差止や改善を要求するもの)の処分件数を大きく上回っています。

 悪質業者の蔓延に伴う消費者問題の深刻化を重く見た行政庁が、監視を強めているものと考えられます。

 経済産業省「特定商取引法処分件数の推移および事業者一覧」

→ http://www.meti.go.jp/policy/consumer/070810kouhyou.pdf

 ベンチャー企業としては、このような一連の行政処分をどのように受け止めればいいのでしょうか。報道される事件は、業界大手の企業などが目立ちますが、実際には中小企業も多くの行政処分を受けています。大手企業ですらこのような厳しい処分を受けるということは、中小企業であるベンチャー企業もそのような処分をうける可能性が高いということを肝に銘じて、法令順守に取り組むことが必要です。

 そこで、行政法規について、日頃から情報を収集し、理解に努めることは勿論のこと、新たな事業を始める場合には、行政法規に抵触しないかにつき、しっかりと事前調査することが必要です。また、行政法規に特徴的なのは、法律の解釈につき、行政庁の解釈指針である通達やガイドラインによって運用がなされていることです。そして、この通達やガイドラインは膨大な量に渡ること、また専門的な事柄が多いことから、調査にあたっては、必要があれば、管轄する行政庁や弁護士に問い合わせるべきでしょう。

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