会社経営に必要な法律 Vol.40 他社の登録商標でも使用できます!?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
今回は、いわゆる「休眠商標」の活用について説明します。

 

政府の知的財産戦略本部が、商標登録制度を見直す方針を固めたというニュースが報道されました。今回は、このニュースを取り上げ、いわゆる「休眠商標」の使用について説明します。

1 ニュースの概要

特許庁に登録されている商標の数は、2008年末時点で約173万件、このうち4割は使用されていない状況にあります。特に、消費者向けの製品は予想される商品名のほとんどが登録済みであることから、権利化されたものの、ストックしたまま使用されていないいわゆる休眠商標(ストック商標ともいいます)を他社が使いやすくするように求める声が出ていました。そこで、政府は、登録後の使用の証明を企業側に義務付け、使用を証明できない商標については登録を取り消し、第三者が新たに登録できるよう制度を見直す方針を固めたとのことです。現在も、3年以上使用されていない商標については「不使用取消審判制度」が設けられていますが、新たな制度の下では、使用証明を求める期間を3年よりも短くする可能性が高いようです。

 

2 法律上の問題

1)     商標とは

商標は、商品・サービスを識別するためのロゴや図柄などのことです。特許庁に登録すれば商標権として保護され、独占的に使用できます。商標権の有効期間は登録から10年ですが、何度でも更新することができます。

 

2)     「不使用取消審判制度」とは

商標の登録が認められるのは、それが使用されることによって蓄積される商標権者の取引上の信用や利益を保護し、社会経済における取引秩序を維持するためです。ですから、このような法の目的に沿って使用されていない商標は、特定人に独占させておく理由がないだけでなく、むしろその使用を欲する第三者のために解放することが法の目的に合致するといえます。そこで、商標法は、不使用の登録商標を整理するための不使用取消審判制度を設けています。この制度では、登録商標が 3年以上使用されていないときは、その登録商標に関して誰でも不使用取消の審判を請求することができ、商標権者が(1)使用していたこと、または(2)不使用について正当な理由があることを証明できなければ、商標権者の権利が消滅します。

 

 

3 ベンチャー企業として

商標にはビジネスを発展させる効果があります。消費者のニーズやイメージにフィットした商標を使用することができればすばらしいGood Will(顧客誘引力)が形成されます。また、商標は、それ自体が経済的価値を有すると同時に、企業全体のイメージを高め、マーケティング効果を高める「ものいわぬセールスマン」としての機能をもっています。つまり、商標の良し悪しが企業の業績に重大な影響を及ぼすことになります。

商標のこうした機能を重視する大手企業では、商品について想定されるネーミングのほとんどを登録しています。たとえば、某飲料メーカーでは、新商品の開発に備えて、年間で300件から400件に上る数の商標の登録申請を行っているとのことです。休眠商標・ストック商標には、必要となったときに、すぐに、安心して使用できるというメリットがある一方で、商品のコンセプトに合わない、言葉が古くなってしまう、管理費がかかるなどのデメリットがありますが、大手企業では、休眠商標・ストック商標を自社製品に使用するだけでなく、他社に利用許諾(ライセンス)したり、あるいは、他社とお互いに保有する商標を利用許諾しあうクロスライセンスの材料としたりして活用しているようです。ただ、今般の政府の方針による商標制度の見直しにより、こうした大手企業の登録商標の活用方針等についても、今後は変化が生じてくるのではないかと思われます。

ベンチャー企業の場合、使用したいと思う商標があっても、すでに他の企業に登録されてしまっていて使用できないということがありがちかと思います。でも、「これ!」と思い込んだ商標であれば、簡単にあきらめたりしないでください。たとえ他社の登録商標であっても、3年以上未使用であれば、不使用取消審判制度を利用することにより、自社の商標として登録することができます。また、今回の商標登録制度の見直しにより、不使用の商標については、商標権者の権利が、より短期間に、取消審判等の手続きを経ずに消滅することから、これまで以上に、希望する商標の権利を取得しやすくなるものと思われます。

なお、希望する商標が登録済みのものかどうかは、特許庁のサイトで検索して調べることができます。ただ、検索にはある程度のノウハウが必要とされます。自分で検索して登録されていないと判断しても、実は登録済みであることが後からわかったというような事態に陥らないように、確認が必要になったときは弁理士の先生に相談されることをお勧めします。

商標は、企業の顔です。ぜひ、すばらしいGood Will(顧客誘引力)をもつ商標を得て、自社のビジネスを発展させていただきたいと思います。

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