会社経営に必要な法律 Vol.41 賃貸オフィスの更新料はなくなるか?

会社経営に必要な法律
賃貸住宅の更新料は消費者契約法に基づき無効であるとする初めての判決が京都地裁でありました。そこで、今回は、このニュースを取り上げ、賃貸住宅や賃貸オフィスの賃貸借契約でよく問題となる敷金や更新料などについて解説します。

 

【ニュースの概要】

 

賃貸住宅の契約更新時期や退去時に、家主が更新料の支払や保証金の敷引(しきびき)を賃借人に求めるのは消費者契約法に基づき違法だとして、京都府在住の会社員が家主に対して保証金および更新料の計46万6千円の返還を求めた訴訟の判決が2009年7月23日にあり、京都地裁は、家主に全額の返還を命じました。

 

原告側の京都敷金保証金弁護団によると、更新料をめぐる訴訟は、賃借人側の敗訴が続いており、2001年施行の消費者契約法に基づき更新料について無効とした判決は、今回の判決が初めてとのことです。

 

【法律上の問題】

 

(1)     賃貸借契約にかかわり支払われる賃料以外の金銭

賃貸借契約の締結時や更新時には、大抵の場合、礼金、敷金、保証金、更新料などの名目で金銭の支払が求められ、また、敷引特約が契約書に設けられることもあります。これらについて簡単に説明しますと、次のとおりです。

礼金・・・ 家主へのお礼として支払われるもので、退去時にも返還されないもの。

敷金・・・ 物件を明け渡したあと、退去時に全額返還されるべきもので、未払賃料や原状回復費用などがあれば、これを控除したうえで返還されるもの。

敷引(特約)・・・ 退去時に返還される敷金分からあらかじめ返還しないことを約束するもので、退去時に賃借人の債務の有無にかかわらず、その一部を償却し、返還しない取扱をするもの。関西地方で多く見られ、敷金の1、2割を差し引いた残額を返還するという例が多い。

保証金・・・通常は敷金と同義で、退去時に返還されるものであるが、敷引と同じように扱われる場合もある。

更新料・・・賃貸借契約が更新される際に、更新の対価として支払われる一時金。

(2)     法律上の支払義務

礼金や更新料について、民法や借地借家法上の規定はなく、当事者間に支払の合意がなければ支払義務ありません。また、民法上、賃貸借契約に基づく通常の使用に伴う汚損・損耗は、使用収益の対価である賃料によって当然に賄うべきものと解されています。賃借人の故意または過失によって汚損・損耗が生じた場合を除き、通常使用に伴う汚損・損耗があったに過ぎない場合、畳の表替え、襖の張り替え、クロスの張替えなどをして、新品同様の状態にして返還する義務は賃借人にはありません。

(3)特約条項の有効性

原則は上記のとおりですが、賃貸借契約に更新料や原状回復費用の負担についての特約条項がある場合は、その特約条項の有効性や効力の範囲が問題となります。賃貸住宅の場合、賃借人は主に消費者となり、消費者契約法の適用があることから、消費者である賃借人に不利な特約条項は無効となる可能性が高いといえます。他方、オフィスの場合は、ほとんどが企業間(B to B)の取引で、消費者保護を考慮する必要がないことから、契約自由の原則が働く余地が大きく、特約条項の有効性が比較的広く認められることになります。

(4)京都地裁判決

今回の京都地裁判決では、敷引特約および更新料特約が消費者契約法第10条に該当するものとして無効といえるかという点について、原告は消費者であり、被告は事業者であること、敷引特約および更新料特約が民法等の一般法の適用による場合に比べて消費者の義務を加重するものであることを認定した上で、被告側が主張する敷引特約および更新料特約に関する複数の法的性質について、一つ一つ検討した上で、被告の主張には合理的理由がないとし、民法に規定する信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるとしています。

賃貸借契約の敷金や更新料等については、従前より社会的問題となっており、今回の判決が出たことで、より一層、関心が高まるものと思われます。今回の判決が、今後の賃貸借契約のあり方にどのような影響を及ぼすかについては注視していく必要があると思われます。

 

【ベンチャー企業として】

 

オフィスの賃貸借においては、契約自由の原則が広く認められることから、賃貸借契約書が重要な役割を果たすことになります。実際、借りたい物件を見つけて賃貸借契約を申し込む際に、法律上の義務がないことを理由として更新料や原状回復費用を負担しないと主張することは難しいものと思われます。

しかしながら、不動産会社によっては、賃貸借契約書に敷引特約条項を設けておきながら、さらに退去時に原状回復費も請求してくるケースも少なくないようです。敷引特約のある物件はできるだけ借りないようにすることがよいと思われますが、どうしても借りたいというときには、退去時の精算について確認をし、「敷引をしたうえで、更に実費精算や自然損耗分の請求をすることはありません。」と契約書に明記しておくことが必要と思われます。

 

賃貸借契約を締結する際には、契約内容を十分に確認し、自社にとって格別に不利益と思われる内容については安易に妥協せず、詳細な説明を求め、可能な場合には契約内容の変更を求め、特約条項を設ける交渉をする姿勢が大切です。