Vol.10 携帯電話番号ポータビリティ前夜・続編

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
 前回「携帯電話 番号ポータビリティ(MNP)には、実はもうひとつの効果があると分かった」という話を書いたのですが、具体的な話がわかりにくいという声がありましたの で、 ちょっと説明を付け足させていただきます(前回の内容で十分事情を飲み込んでいるみなさんも、ぜひお付き合いください)。

ケータイ市場における、キャリアの光と影

 日本のケータイWEBが世 界に先駆けてこれほどの発展を遂げることができたのは、携帯電話通信会社(キャリア)の強力なバックアップ体制があってこそ。
日本のケータイ 「キャリア」は通信事業社を本業としつつ端末を発売し、ISPサービスとWEBポータルサイトの運営までを一括管理する体制を築きました。
これに より「公式サイト」構築が可能になり、利用者はカンタンにサイト利用できる環境を、コンテンツ提供企業は「デジタルコンテンツを確実にキャッシュ化する」 というビジネスモデルを手に入れました。
その結果、短い時間でこれだけ大きなケータイ市場が出来上がったのです。

MNPについてのお話を伺ったのですが、結局ケータイコンテンツのオープン化や商慣習見直しのお話に行き着いてしまいました。
WEBのサービス全体が新しい進化を遂げようとしているいま、ケータイコンテンツももっとカンタンに、自由に、大胆に、
制作・運用できる環境が求められています。

(前回記事より)

  ところが市場が熟成し、またケータイWEBの公共性が高まるにつれ、キャリア各社による囲い込み戦略の影の部分がクローズアップされるようになってきまし た。

 たとえば「キャリアによる記述言語やサポートファイル形式の違い」の問題があります。

 黎明期には利便性の向上や優 良コンテンツの囲い込み戦略、コンテンツの品質や権利処理問題を担保するための「足切り基準」としてコンテンツ制作のための「仕様差」は一定の役割を負っ てきました。
しかし、いま閲覧可能なWEBサイト目当てにキャリアを乗り換えるような利用者はほとんどいません。そもそもケータイWEBコンテン ツはキャリアにヒモ付いたサービスではなく、提供企業やサイト利用者のものであるというPCのWEBでは当たり前すぎる常識に立脚してみれば、かなり奇妙 な存在として浮かび上がってきます。

 しかも、それを解決するために──つまり、キャリアを超えて同一のコンテンツを表示させるために── 提供者が支払うコストは決して小額ではありません。企業がケータイサイト開発を検討しながら、躊躇してしまう理由のひとつです。
また、WEB全体 が「2.0」にバージョンアップを遂げようとしている今、PCだけでなくケータイWEBも視野に入れたサービス設計が多く考案されて当然でしょう。
PC 版と、ケータイ版でサービス仕様を変えるのは、端末の物理的限界などの理由で仕方がないとして、この独特のローカルルールを乗り越えるために、単純計算で 2倍の追加開発をしなくてはなりません。
──つまりそれだけの資本力がなくては、広くあまねくケータイWEBサービスを提供できないのです。

  まさにケータイWEBを利用したサービスを提供しようというベンチャーには「百害あって一利なし」。
ひいてはケータイ市場の活性化を阻害している 要因と言えるでしょう。

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ソフトバンクモバイルへの期待

オープンに制作・運用できる環境が提供されれば、未参入のプレイヤーや新たなベンチャーの活躍できる広大な市場が拡がるのは
明らかです。
このクローズな環境を新キャリア・ソフトバンクは変革するのか? まず、そこに注目したいと思います。
変革を進めようとするとき、MNPはたしかに強力な武器になるはずなのです。

(前回記事より)

  そこで、新参入「ソフトバンクモバイル」のケータイWEB戦略に、とても期待しています。
日本のPCインターネットのブロードバンド化を常識はず れの戦術でイッキに加速させたソフトバンク孫正義社長が、PCポータルの王様「Yahoo! JAPAN」を巻き込んでケータイ市場に参戦するのですから。

 少なくともWEBについては、キャリア間の縄張り競争に囚われる必要がない という強みがあります。
「ケータイWEB」という限られた戦場で戦うよりも、(PCとケータイをクロスさせた)より大きなWEB市場を戦場にして 戦った方がトータルで利益を生むはずです。
端末に付く「Y!」ボタンはそういう姿勢を示す旗印なのかもしれません。

 てんと考える と、コンテンツ提供企業に「PC版とケータイ版のコンテンツの仕様差」を解決するソリューションを提供したり、利用者に「キャリア間の仕様差」フリーで ケータイWEBを利用できる類のサービスを提供するのではないかと期待してしまいます。

 ここからはわたしの妄想になります が…

  • PC版のYahoo!に登録するサイトの運営企業にケータイ版サイトの開設を促し、さらにサイト開発を促進するソリューショ ンが提供されれば、それだけでケータイ市場への参加者を増やすことができます。
    市場のパイが格段に拡大する可能性を秘めています。

 

  • 利 用者にキャリア間の仕様差を気にすることなくWEBを利用できるサービスが提供され、(ボーダフォン時代には閲覧できなかった)他キャリア向け仕様のサイ トも検索・閲覧対象になるなら、わたしもぜひ使ってみたい、すばらしいサービスです(さすがに他キャリア公式サイトの会員登録はできないでしょうが)。

 

  • さ らにYahoo!モバイルですでに提供されているような各種ユーティリティサービスの特別バージョンがセットされ、MNPという環境のもとで訴求されれ ば…

 

 他キャリアを脅かすに十分のサービスメニューになるのではないでしょうか。

 

ケータイビジネス環境2.0へ?

 ケータイWEB市場の競争パラダイムから抜け出し、PCとケータイ との連動や他キャリア公式サイトへのトラフィックさえもやってのけてしまうような新しいパラダイムが形成されれば、他キャリアも追随。早晩、キャリア間の 仕様差も解消する方向に進んでゆくのではないかと期待してしまうのです。

 ここに上げた例は、MNPの直接的な影響ではありません。
し かしMNP施行がキッカケとなり、これまで考えられなかったような変革(イノベーション)が生じる可能性があることを示しています。
しかも、その イノベーションは、ケータイキャリアにとって必ずしも利益になるとは限らないところが面白いところです。
月並みながら、「ケータイビジネス環境 2.0」とでも名前を付けておきましょうか?

あわただしく準備を進めているキャリア各社には少し気の毒ですが、MNPは「パンドラの箱を開くカギ」なのかもしれません。
(前回記事より)

  利用者やケータイWEBのサービスを、これから展開しようという企業にとっては、期待の「宝箱」です。
なにが出てくるのか? 待ち遠しい気分です ね。

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