Vol.19 iPhoneによって変わる日本のモバイル市場

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
6月29日、米 アップル社のiPhoneがついにアメリカでデビューを果たしました。発売前夜には、アップルストアの前で行列を成す購入者の映像がニュースとして世界に 配信され、未だ発売時期すら未定の日本においてもすでにPR効果は絶大と言えるでしょう。さて今回はiPhoneが日本のモバイル市場におよぼすであろう 影響について考察してみました。

iPhoneの日本での発売予定は?

 2007年1月に製品発 表が行われて以来、iPhoneの注目指数、期待値はともにこれまで一携帯電話端末に向けられたものとしては最大となりました。

 事実、発 売に合わせた"お祭り騒ぎ"はWindows95のお目見えを彷彿させるものがあり、アップルの掲げる国内スマートフォン市場の10%獲得も早々と達成し てしまうのではないかと思われます。

 もっとも気になる点として、iPhoneで使える機能にはGoogle Maps、Yahooメール、Youtubeの閲覧、そしてポッドキャスティングなどなど、今のネット社会のスターサービスが一堂に会している点です。い ずれのサービスも現在日本にある端末のスペックでも利用可能ですが、アップルの持つ強いブランド力をフィルターにすると、ものすごいことのように感じられ ます。

 実際、私も初めてiPhoneの使用動画を見た時、正直に「ほしい」と思いました。

 と、ここまでしたためておいて 重要なこととして、日本では果たしていつiPhoneが発売されるのか?そもそも発売されるのか?それすら未定だと言うことです。その理由は通信方式の違 いであり、日本ではiPhoneが採用しているGSM/EDGE方式ではなく、ドコモとソフトバンクがW-CDMA、auがCDMA2000であるため、 日本に投入するためには新たな開発が必要だからです。

 従って、アジアに向けての発売は2008年と発表されているものの、日本お よび同じ理由により韓国の2国については白紙の状態です。

 しかし、アップル社が日本市場、韓国市場を捨てておくとは思えませんし、携帯各 社ともiPhoneの投入に意欲的なようなので、いずれ日本でもiPhoneが使える日がやってくるでしょう。

 では、「日本でも発売され る」という仮定を元に、モバイル市場に及ぼす影響について考察してみました。

 なお、投入は1年先とも3年先ともいわれているため、その時 点でのモバイル市場の趨勢は予測がつきません。従って、2007年6月の時点での現状に当てはめたら、という前提を元にしていることをお断りしておきま す。

 

キャリアはどこに?

  現在、携帯3社がそれぞれiPhoneに対するラブコールを送っています。仮に日本市場での販売が本国と同じ10%のシェア獲得を目標にするとすれば、当 然キャリアの勢力図は大きく変わります。

 下馬評で本命説が囁かれるソフトバンクから販売されるとなれば、起死回生の一打となることは間違 いないでしょう。
今のソフトバンクはコンテンツサービスが弱く、コンテンツプロバイダーからも重要視されない状態が続いていますが、むしろその逆 境が吉と出る可能性もあります。なぜならiPhoneの主要サービスの一つは音楽配信ですが、ドコモとauには競合するサービス(ドコモは Napster、auはLISMO)があるのに対し、ソフトバンクにはないからです。

 しかし、同じW-CDMAに対応するなら契約数首位 のドコモが選択される可能性も高く、実際アメリカでは最大のシンギュラー・ワイヤレスと18カ月の独占契約を結んでいます。

 auに関して は前述のとおり、LISMOの存在と唯一CDMA2000を採用していること、今までスマートフォンを発売した実績がないこと、などから3キャリアの中で一 番風下にいると考えられます。

 いずれのキャリアが選択されるかはわかりませんが、仮にソフトバンクであった場合、iPhoneをセカンド 携帯として持つユーザーが現れ、ドコモあるいはauであった場合、より2キャリア間でのユーザー移動が頻出するのではないかと思います。

 

モバイル専用サイトはなくなるか?

 iPhoneでは、フルブラウザSafariを搭載してお り、PC向けのWEBサイトを閲覧することができます。通信速度、画面表示の限界から日本ではあまり積極的に受け入れられていないフルブラウザですが、 iPhoneによって風穴が開けられる可能性は大いにあります。そして、iPhoneが当たれば、メーカー各社ともフルブラウザ端末の開発により意欲的に なるでしょう。

 そうなると、です。

 情報量が少なく、表現力も劣るモバイル専用サイトは存在意義が変わってきます。

  なくなるということはないでしょうが、現在の巻き物的な見せ方から一歩進化することは確実と思われます。恐らくiPhoneやAQUOSケータイのように 横向きにできる端末に対応して段組みができたり、よりデザイン性を高めるためにスタイルシートが使えたり、ということは遠からず仕様に組み込まれるでしょ う。

 iPhoneの華々しいデビューは、閉塞感が漂いつつあるモバイル業界に一陣の新風を巻き起こしたのではないかと思い ます。それが仮にいつ日本にやってくるかはわからなくても、これだけ盛り上がりを見せているということはモバイル業界にまだまだ伸びしろがあるという証明 なのではないでしょうか。

 また、発売が未定ということは、来るべき日に対しての準備に時間を費やせるということです。

  iPhone?― 鳴り物入りのスマートフォンは賢者の石となりうるのか?満を持して来日を待ちたいと思います。

(この記事は2007年6月29日、 ちょうどiPhoneの発売日に執筆しました。)

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