Vol.3 現代に湯治文化を蘇らせるアイテムの企画設計とレイアウト設計

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 サービス業においてクリンネス(衛生観念)は重要な概念です。とりわけお客様が裸になる場所を提供する温泉ビジネスにおいては、最重要です。そういった意味からも、施設の清掃やスタッフの服装の乱れは許されません。いくら最高の材質で施設を造ったところで、清掃が行き届かずホコリまみれであったり、傷だらけの床や壁では二度と足を運んでくれないでしょう。いくら笑顔の接客をしても、シミの付いたシワくちゃのユニフォームでは同じことです。

 

現代に湯治文化を蘇らせる企画設計

ホスピタルイメージ さて、温泉が施設の中核であることは間違いありません。しかし、温泉は施設の中の一つのアイテムとして捉えるべきです。なぜなら温泉ビジネスでもっとも大切なことは「お客様に心身共に健康になってお帰りいただく」ことにあるからです。
 前回で述べた湯温38度は、あくまでも入浴行為のみの注意点です。「健康になるための入浴」であるならば、ほかのアイテムも同じ考えで企画設計しなければなりません。「体に良い食事」「健康になるための運動(温泉ヨガなど)」「精神的リラックスのための瞑想」「体に良いマッサージの種類」「現在の心身バランスを知るためのヘルスチェック」などが挙げられます。ここで重要なのは、これらアイテムは温泉の付帯施設ではなく、あくまでも温泉と同列に扱うことです。だからこそ施設の考え方が顧客に対し鮮明化するのです。
 三重県鳥羽市にある、タラソテラピーを使った「タラサ志摩」は、医師も常駐する世界的に名の知れた日本を代表する温浴施設であるので参考にしていただきたいと思います。
またお客様がお風呂に来るという行為には、その前と後ろにストーリーの展開がなくてはいけなりません。施設に来るまでの道中、施設に入る期待感、受付から更衣室までのアプローチ、更衣室の雰囲気、浴室、その後の休憩、食事や喫茶といった具合です。
  道中のサインデザインも施設イメージを想像させる色やデザイン(もちろん地図などのわかりやすさも含む)、施設到着時に眼にする風景、ファサードのデザイン設計、ユニフォームデザインや(シワになりにくい素材や汚れにくい素材選び)、更衣室までの香や調度品、照度、日本的感性に訴える明珍火箸などの風鈴の音、田舎モダンなレストランやカフェなど、全体に一貫性のあるトータルバランスがあるからこそ、お客様の記憶に残す事ができるのです。

 

温泉のユニバーサルデザイン

設計図イメージ 次に施設全体の設計思想としてはユニバーサルデザインが好ましいと思います。広範囲なお客様をお迎えする以上、老若男女、障害者などすべての人に対応する必要があります。ただ、顧客ターゲットを絞り込んでいる場合はこの限りではありません。(子供は入館不可など)
 経営的視点から見ると、客導線の効率化と併せて大切なのがスタッフ導線の効率化です。これはレイアウト設計上もっとも重要となります。たとえば、館内着、タオル付施設と仮定します。それらの流れは荷受→仕分作業→フロント→返却場所→荷渡し場所と流れます。業者からトラックで運ばれてきますが、その荷受場所イコール作業場(仕分け袋詰め作業はスタッフによるところが多い)でないといけません。できれば一連のルーティーンが連続しているのが望ましいです。なぜなら布類は意外と重く、特に女性スタッフにはかなりの重労働となるからです。
 スタッフ導線のあるバックヤード部分から設計を開始できれば申し分ありません。
 理由はバックヤードをできるだけ小さく一つに固める事が、無理なく運営コストを削減し、スタッフの働きやすい環境を完成させるからです。
 対してフロントヤードの重要なポイントは、浴室とレストラン部を対局位置に配置することです。顧客心理として、口に入れるものがあるレストランが脱衣場の前では違和感を覚えるでしょう。また、なくてはならない仮眠場所は、浴場と近いほうが利用者にとっては負担がありません。入浴は相当体力を使い疲れるため、疲れた体を早く休ませることができるからです。ここで大切なのはリクライニングチェアよりは、ベッドや地べた(畳がよい)といった真っ平らであることが重要となります。湯治において、その効果を体内に循環させるには、心臓に負担なく血液循環ができる平らな場所での睡眠がベストであるからです。

最後に

  平安時代、入浴は極めて一部のセレブな人たちの行為でした。やがて天然に自噴する温泉は、一般大衆にローコストな入浴を可能にしました。そのような歴史的経緯を考えると、温泉が愛され今日まで連綿と続いてきたその理由が、これからの温泉ビジネスの大いなるヒントと方向性を与えてくれるのではないでしょうか。
 私たち日本人が持つ、潜在的感性に訴えた第4期温泉ビジネスのこれからは決して暗いものではありません。 古きを訪ねるだけでは何も生まれません。それは結果が物語っています。老舗温泉旅館は、その名声にアグラをかき続けたせいでたくさん倒産しているからです。
「故きをたずね、新しきを創る」。この温故創新の考えが、現代の湯治のあり方を広め、より良いビジネスとして愛され発展すると確信しています。

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