会社経営に必要な法律 Vol.02 HOYA・ペンタックス合併から「株主意向」の重要性を見る。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2006年末から、光学ガラス大手のHOYAと、カメラ・光学デバイスのペンタックスの合併計画が進められていました。しかし、今年2007年4月10日に、ペンタックス側の取締役会決議によってこの合併計画は断念されることになりました。そこで今回は、ベンチャー企業にとっても無縁ではない、企業同士の合併について、この事件から何に気をつければよいのかを説明します。

事案の概要

 HOYAとペンタックスは、昨年2006年12月に合併合意を発表しました。その内容は、HOYAを存続会社とし、「HOYAペンタックスHD」を設立するものであり、合併の比率はペンタックス1株に対して、HOYA 0.158株というものでした。

 順調に進んでいるかに見えたこの合併計画が頓挫したのは、今年2007年4月10日のことでした。この日、ペンタックスは、合併を断念する取締役会決議をし、これをHOYAに伝えました。

その理由は、株主の一部に合併比率への不満があったため、合併計画が株主総会決議で否決される可能性が高いというものでした。

 現時点で残された可能性は、HOYAによるTOB(経営権の取得などを目的に、株式の買い取りを希望する企業が、買付期間、買取株数や価格を公表して、不特定多数の株主から株式市場外で株式を買い集める制度)とされており、両者の今後の動向に注目が集まっています。

 なお、一部の報道では、今回の経営統合について「株式交換」であるとされていますが、HOYAとペンタックスによる発表では、それらの経営統合につき「合併」と記載されていますので、本記事では「合併」であるものとして説明します。

    IT media News

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/21/news046.html(合併合意)

http://www.itmedia.co.jp/news/0301/07/njbt_01.html(合併断念)

 

 

法律問題

 合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合体することをいいます。また、合併には、

一方の会社が存続して、他方の消滅する会社を吸収する場合(吸収合併)と、元の会社がすべて消滅して、新しい会社を設立する場合(新設合併)の2種類に分けられます。今回のケースは、このうち、吸収合併にあたります。

 吸収合併時には、消滅する会社の株主は、持株数に応じて存続する会社の株式等の交付を受け、存続する会社の株主となります。この場合に交付される株式の比率が、「合併比率」です。

 また、合併は、(1)合併契約の締結、(2)事前の開示、(3)株主総会による承認、(4)会社債権者異議手続、(5)登記、(6)事後の開示という手順にのっとって進められることが会社法上、要求されています。今回のケースでは、(3)「株主総会による承認」における株主総会の承認が得られないことを理由として、(1)「合併契約の締結」の前段階としての取締役会決議において、合併の断念が決定された、ということになります。

 

合併の手続について(SMBCコンサルティング)

http://www.smbc-consulting.co.jp/company/solution/business/business_19.html

 

ベンチャー企業として

 今回のケースは、上場会社同士の合併ですが、ベンチャー企業にとっても合併は無縁ではありません。ベンチャー企業では、株式公開へ向けての企業規模拡大のために合併が利用されることが多くみられます。そこで、ベンチャー企業の経営者も合併の手続きについて理解しておくことが必要だと思われます。

 また、今回のケースでは、株主の意向が合併断念に影響を及ぼしたとされています。ベンチャー企業は、一人の創業者ではなく、数人の創業メンバーによって出資がなされ創業されることもありますが、このような場合には、今回のように株主の足並みが揃わないと、合併等の重要な事項についての決定が滞る可能性があります。

 合併がなされるには、株主総会決議において、議決権の3分の2以上の賛成を得なければなりません。逆に言えば、持分比率の目安としておよそ議決権の3分の1程度の株主が反対すれば、合併はできないわけです。したがって、ベンチャー企業における合併でも、株主構成や各株主の持分比率を踏まえて、株主の意思を確認しつつ計画を進めることが必要です。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める