会社経営に必要な法律 Vol.08 NOVA事件のその後 -法を破ることの恐ろしさ-

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2007年4月、最高裁判所は、英会話学校を経営するNOVAに対し、NOVAの受講契約における解約精算金の計算方法が消費者契約法に違反し不当であるとの判決を下しました。NOVAは、この判決の後どうなったのでしょうか。その経過を追ってみると、ベンチャー企業として学ぶべき点がたくさんあります。

ニュースの概要

 以前の記事でも扱ったように(Vol.4 NOVA事件に学ぶ消費者保護という法律の原則)、2007年4月、最高裁判所は、NOVAの受講契約における解約精算金の計算方法に関する規定について、特定商取引法に違反するとの判決を下しました。しかし、NOVAにとってはこれで終わりというわけではありませんでした。

 この判決の後、2007年6月、経済産業省は、NOVAの受講契約に関して、契約書などの書面記載不備や、誇大広告など特定商取引法違反の事実があったとして、新規契約の勧誘、申込受付および契約締結を2007年6月から12月までの6ヵ月間停止するなどの行政処分を行いました。

 4月の判決によって、受講生の中途解約に基づく返金請求が増大したにもかかわらず、6月の行政処分によって、新規の受講契約ができなくなったことにより収入が減少したために、NOVAの資金繰りは急速に悪化しました。実際に、新聞報道によれば、NOVAは、既存の教室のうち都市部を中心とする200校につき、閉鎖を検討しているとされています。また、株価は、判決および行政処分前にくらべ、約半分以下に下がっています。さらに、2007年4~6月期の同社の連結決算は、売上高が前年同期比31.9%減の92億円、営業損益は45億円、当期損益は24億円のいずれも赤字となっています。

 このような資金繰りの悪化の表れとして同社の従業員への給与が未払いになっているとして、大阪中央労働基準監督署は、従業員への未払い分の給与を支払うよう、是正勧告を行っていたことが2007年9月28日までに、新聞報道により明らかになっています。給与の遅配は行政処分後2007年7月から3ヵ月連続となっていて、同監督署からの勧告は、これで4度目になるとのことです。また、給与の遅配に加えて受講生からの中途解約精算金の返金も滞っていることから、2007年10月9日、同社の外国人講師が主に加盟している労働組合は経済産業省に対し、NOVAの講師の雇用確保と利用者の被害拡大防止に向けた措置を取るよう要請しました。

 これらに加え、中途解約に関して元受講生から訴訟を提起されるなど、NOVAをめぐる混乱は、しばらく続きそうです。

 なお、ジャスダック証券取引所は、2007 年9月21日、NOVAに対し、内部管理や適時開示体制について、改善報告書を提出するよう求めたとのことです。

 このような状況の中、2007年10月9日、NOVAが外資系ファンド2社に対し、計2億株の新株予約権を発行しました。ファンド2社が新株予約権すべてを行使すると、NOVAは70億円を調達することができるとのことです。これらの事情からは、NOVAは、最高裁判決および行政処分以後、急速に経営状態が悪化していることが伺えます。

 

問題となった法律

  NOVAの業務について問題とされた法律は「特定商取引法」です。この法律については、BtoCのビジネスを行う企業にとっては非常に重要な法律ですので、十分な理解が必要です。また、この法律は、社会状況の変化にあわせて、頻繁な改正がなされるという特徴もありますので、検討する場合には必ず最新の情報を収集するように気をつけましょう。

  ・特定商取引法についての経済産業省の解説http://www.meti.go.jp/policy/consumer/tokushoho/gaiyou/gaiyou.htm 

 

ベンチャー企業として学ぶべきポイント

 運営する業務について違法と判断されたNOVAのその後の経過を見ていくことによって、業務についての違法行為があった場合には、そのとき謝罪や違法状態の是正をすればそれで済むというものではないということがわかります。とくに、行政による規制法については行政処分を受ける可能性があり、今回のように業務停止命令などが下された場合には、事業の継続にとって直接的な損失が生じます。また、一度このようなことがあると、NOVAのような一般の消費者向けのビジネスをしている企業はとくに、その後消費者に敬遠されたり解約が相次ぐなど二次的な損失も大きなものとなります。

 NOVAは、70億円の調達が可能な新株予約権の発行により、この窮状を乗り切るようですが、創業間もないベンチャー企業にとっては、このような手段を使うことは実際には困難と考えられ、今回のNOVAと同様の状況に陥った場合には、企業の存続に重大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。

 そこで、今回の事件から、特にベンチャー企業にとっては、コンプライアンス(法令順守)がいかに企業にとって重要であるかを再認識してもらえればと思います。創業間もない企業は、まず利益を伸ばすことに目を向け、営業部門を重視し、ともすると管理部門がおろそかになりやすいものですので注意が必要です。

 また、今回NOVAはジャスダックから改善報告書の提出を求められていますが、株式公開した場合には、このように投資家に対する責任も問題となるなど、不祥事による影響が広範囲に及ぶことになります。これから株式公開を目指すベンチャー企業は、この点についても留意しておく必要があります。

 

再建を断念。破産手続きに  (2007年12月5日 加筆)

 新聞報道によれば、資金繰りの悪化していたNOVAは、2007年10月25日、会社更生法の適用を申請することを取締役会で決議し、翌26日、大阪地方裁判所に対し、同法の適用を申請しました。これにより、NOVAは、更生管財人を中心に、経営再建を支援する企業などを探すことになりました。
 その後、2007年11月6 日、NOVAは、その事業の一部を、学習塾などを展開するジー・エデュケーションに譲渡することで合意したことを発表しました。これに伴い、NOVA本体は、会社更生手続による再建を断念し、破産手続により清算されることになりました。

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