知的財産:Vol.22 「ある日突然同じ社名が」商号・商標の自己防衛とは

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
会社法の施行以降、会社名やお店の名前と商標との関係についてのお問い合わせがたくさん寄せられています。改めて、商号(屋号)と商標との関係を整理し、何をどう留意していかなければならないかを説明したいと思います。

商号の保護の実態

 会社法になって、住所さえ異なれば同じ名前(同じ商号)の会社を設立できるようになりました。このため、法律により商号の保護を期待するというより、自己防衛しないといけない時代になったと考えるのが妥当だと思います。

 確かに、不正競争防止法で争う方法はありますが、著名性の問題など課題が多いのが現実です。多くの方が不安を持たれて、お店の名前を独占できないか?他の会社からクレームが来ないか?などの相談が著しく増えています。
 

商標による保護とセットで考える

 独占権による保護を考えると、商標登録による保護ということになります。つまり、会社名を会社法や不正競争防止法で保護し、店の名前を商標登録で保護する、といった感じです。

 ただし、商標が登録されるためには、特許庁の審査が必要で、すでに誰かが似たような商標を似たような商売に使用していたり登録している場合には、登録されません。逆の見方をすれば、登録できないものを使用すると、他人の権利を侵害する可能性があるともいえます。
 

商標権は絶対に強い?

 ただ、実際には商標が登録され独占権を得たとしても、その保護が絶対的だとはいえません。商標登録の出願前にその商標を使っていた人に対しては、原則権利行使できません。また、似たような名前で似たような商売をしている人のすべてを排除することができない場合があります。

 例えば、地方の田舎で1店舗だけでお店をやっていたとします。そして、そのお店の名前を商標登録して独占権を得たとします。あえてホームページも作らず、通販もするわけでもなく、そのお店を知っているのは精々地元の人だけだとします。そのような商売の環境下、そのお店は商標権を取得していたとします。この場合、同じ名前のお店を、何百キロも離れた遠隔地で出店できないのでしょうか?
 

競合秩序って?

 上記の答えとしては、競合秩序を乱さない限りにおいて使用が許される、というのが基本的な考え方だと思います。遠隔地で同じお店の名前(商号)で出店しても、原権利者のお客さんを横取りするようなことも起きませんし、お客さんが原権利者のお店だと勘違いしてお店を訪れることも考えにくいからです。

 つまり商売上の競合秩序が乱されることは考えにくいのです。お互いの商売上の利益が守られていれば、お互いに仲良くやりましょう、ともいえます。
 

お客様目線で

 とはいえ、権利侵害は権利侵害で、いつ何時お客さんの利益を損ねることになるかわかりません。例えば、地方の田舎の店が、都会に出店し著名になることもあるわけです。最終的には、自己の利益のために独占権を得るというよりも、お客さんに正しくお店を選んでいただくための看板として、しっかりとお客様目線に立って権利の取得と権利行使を考える必要があります。

 「真似されたくないから」というのでは昨今のお客さんには、お店に好意を抱いていただくことはできないでしょう。

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