知的財産:Vol.24 法の落とし穴、商品販売後は特許出願ができない!?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
最近も実際に商品を販売してしまった後に、特許出願をしたいと相談に来られた会社の方がいました。どのような対応をしたのか、特許制度・意匠登録制度等を織り交ぜて、その実際を説明していきます。

誰が販売しても新規性は無くなる

 前回も説明したとおり、たとえ発明者(特許の場合)や創作者(意匠の場合)が自ら販売した場合であっても、商品を販売した後では新規性はなくなってしまいます。つまり、特許、実用新案登録出願、意匠登録出願は、自らが販売する前に出願を終える必要があります。

 

まず、特許出願はダメ

 今回のケースでは、特許出願に関しては、出願をあきらめていただきました。確かに特許法第30条に新規性喪失の例外規定があり、一定の要件で新規性を喪失していないとみなしてもらえる制度はあります。しかし、特許では、自ら販売してしまった場合、この救済規定の適用を受けることはできません。

 

意匠登録出願では?

 一方で、意匠登録出願の新規性喪失の例外規定では、自らの販売に関しては、例外適用を受けることができるのです。意匠は、商品の最終的な外観を保護する制度で、商売上、市場の反応を見て販売の可否の判断をするケースも多く、自らの販売に関して例外を認めないと、出願人に商売実態とは乖離した不利益を受けることが想定されるからです。

 

すべてのケースが意匠登録出願に乗り換えられるのか?

 今回のケースでは、会社の方はあくまでも特許出願ということで相談に来られたのですが、実際には意匠登録出願を行いました。正直言って、このようなケースはある意味ラッキーだったと言えます。というのは、発明がソフトウェアなどで外形形状を伴わないもので、ソフトウェアに発明の特徴がある場合には、商品の外観を保護する意匠登録制度にはそぐわないからです。

 今回のケースでは、商品の外観形状に発明のポイントがある一方で、その外観形状が機能美を備えており、外形形状の保護にも所定の効果が期待できるものだったのです。逆に言いますと、特許はダメでも意匠登録であればOKな場合もありますから、意匠登録の可能性も検討対象にしていただくのも必要かもしれません。

 

意匠登録出願の新規性喪失の例外適用

 意匠登録出願において例外の適用を受ける場合、特許と同様に、新規性を喪失時から6ヵ月以内に出願をする必要があります。また、出願時に、願書に所定の記載が必要で、かつ出願日から30日間以内に所定の証明書の提出が必要です。意匠の場合、特許とは若干異なり、この証明書の要件が厳しくなるケースもありますので、特許庁や弁理士と十分に相談をするようにしてください。また、証明書提出期間の30日間は長いようで短いので、その点も注意して、出願前から証明書の手配をするなどの対応が必要です。

 

くどいようですが

 新規性喪失の例外規定は、あくまでも新規性が失われていないとみなすだけで、出願日まで遡ってくれるわけではありません。商品を公にする前に、必ず出願してください。そして、新規性喪失の例外をあてにしないでください。

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