経営戦略 Vol.86 きちりが北新地に出店した『新卒ダイニングRookies』のユニークな視点

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

今年(2012年)4月、大阪北新地にできた「新入社員だけで運営する居酒屋」が、好調に推移しているようです。『新卒ダイニングRookies』というお店ですが、人材育成の場として機能しているばかりか、メディアからの注目も集め、なおかつ「新人に負けてなるものか」と他店のスタッフのやる気を引き出すきっかけにもなっているのです。この多角的な視点には、学ぶべきところも多そうです(*^^)v

「きちり」がオープンした採算度外視の店舗とは!?

あのタニタとタッグを組み、「タニタ食堂」をヒットさせているレストラングル―プの「きちり」が、今春おもしろい取リ組みを始めたのをご存じでしょうか? 大阪の繁華街「北新地」に、採算度外視の新人育成用店舗をオープンしたのです。その名も『新卒ダイニングRookies(ルーキーズ)』。なんでも同店は、関西地区採用の9人が、内定の段階から共同で企画したそうで、指示を仰ぐ上司のいない中、提供する料理、価格設定、内装までを、すべて新人だけで考えたのだとか。もちろん、相談に乗るコーチ役の先輩社員はいたようですが、会社は同店を“人材育成の場”として捉え、“新人のうちに思いきった失敗をさせる場”として位置づけているのです。これまで同社の新人は、本社で短期間の研修を受けた後、所属する店が決まり、店長のもとで働きながら訓練を受ける体制だったようですが、思い切って採算を度外視し、研修用の店舗を出したというわけです。新人たちが決めたこの店のコンセプトは「おっちゃんたちのディズニーランド」。店は以前の鳥料理店を居抜きで使ったようですが、1階30席、2階42席の広さで、売上高は月間400万円と、ほぼ見込みとおりの数字で推移しているようです。

若いうちに“失敗”することの重要性を教えられる店

一見、かなり思い切った経営判断のように見えますが、同社がここを「新人のうちに思い切って失敗できる場所」と定義していると聞いて、ちょっと感心してしまいました。ご存じのとおり、今、社会はことごとく失敗に厳しいムードになってきています。店員がちょっと粗相をしようものなら、すぐさま“つぶやかれて”しまいますからね(―_―)!! それはともかく、会社も上司も「なるべく失敗しないように」という判断基準を持っているところが多いように感じます。しかし、若いうちから「失敗しない」ことだけを目指して仕事をしているようでは、その後の成長は期待できないと思いませんか? そんな環境下では、おもしろい発想のできない、小さな型にハマった人間だけがつくられていくように思えます。 もちろん、新人研修に付き合わされるお客さんとしてはどうなのか…とちょっと心配になったりもしますが、その点「北新地」に出店したあたりは、さすがだと思います。北新地は、大阪では割とお客さんの年齢層も客単価も高い地区。北新地で飲んでいる方の中には、経営者や企業幹部なども少なくないので、わが社の新人を見るようなあたたかい視線で応援してもらえるだろう・・・という、多少の読みもあったのではないでしょうか(*^_^*)

経営課題を一挙に解決する高さと広さを持った視点

さらに同店を冷静に分析すると、マイナスよりプラス要素のほうが数倍多いことに気づくでしょう。まず、ただの居酒屋オープンで、これだけメディアの注目を集められたのも「新人だけ」というエッジを立てたからに他なりません。現に同店のメディア露出は多く、来店したお客さんも、ブログやSNSに、おもしろがって投稿してくれています。その上、多少の段取りの悪さがあっても「新人だから…」とお客さんから大目に見てもらえるでしょうし、同社のグループ店で、仮にこの店より業績の悪い店があったとしたら「新人に負けるな!」と、ハッパをかける絶好の材料にもなるでしょう。もちろん、この店で働く新人たちも、座学の研修を何十時間受けるより、貴重な経験をたくさん積むことで、驚くべきスピードで成長していくと思います。同社の狙いとおり、とかく失敗が許されにくい今の社会で「失敗してもいいから、思いっきりやってみろ!」と言われる環境に身を置けることは、将来的にも他に代えがたい財産となりますよね。これからの時代、経営者はこのくらいの高さと広さを持った視点で発想できないと、勝ち残っていけないように思えます。この事例から刺激を受け、自社の経営課題を違った角度から解決できないか、楽しくアイデアを練ってみてください(@^^)/~~~

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