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ブログシステムが1億円!?
ある小規模な販売会社での数年前の事例です。この会社は当時社員 20名程度で、Webサーバを1台自社に設置し運用していました。ただし、社内にシステムに関するノウハウはあまりありませんでした。
そんな 時、世の中でブログが流行し始めました。同社の社長は、ブログはどうやら販促に活かせるらしいと聞き、いち早く自社にも導入しようと発案しました。まだ細 かい企画はありませんでしたが、“とりあえず”社長の知り合いのIT業者に相談したのです。
IT業者からはいろいろ質問されましたが、細かいこ とは考えていなかったため、返事は曖昧にし、ひととおり「夢」だけ語りました。また、自社のWebサーバも普段は放っておいて問題なかったため、ブログも おそらく同じでよいだろうと判断し、自社にサーバを設置する前提で見積もりを依頼しました。
しばらくの後、IT業者から見積もりが提示されまし た。サーバ1台導入で、その総額、およそ1億円…
「なんか高いけど、そんなものなのかな…」 誰も疑問を呈することなく、そのまま購入を決定し てしまいました。
「知る」ことの重要性
ブログなら現在ではASPで安価に活用することができますので、 今では上記と同じ話はほとんどありえませんが、この当時はブログがはやり始めたばかりで、ASPではよいものがなかったようです。
しかし、これ はブログに問題があるわけではなく、ITに対する相場感覚の無さに問題があります。相場感覚のある人は、サーバ1台で システム総額が1億円と聞いた瞬間「ありえない」と感じます。
この事例は少々極端(でも、本当にあった話を元にしています)ですが、これに類す るような、無知に起因する失敗はたくさんあります。無知による失敗を防止するには、情報収集しかありません。ですか ら、情報収集していない企業にとっては笑いごとではない事例なのです。
価格はなぜ上がるのか?
では、この事例に出てきたIT業者は悪徳業者でしょ うか? 筆者は当事者ではないのでわかりませんが、悪徳だと断言しきれない状況もあります。
それを理解するにはまず、「見 積額はなぜ高くなるのか」を知ることが必要です。見積もりを高くする要素にはいろいろありますが、主に次のようなものがあります。
1. シ ステム規模(大きいほど費用高)
2. 技術の新規性(最新技術ほど費用高)
3. 納入時期(急ぐほど費用高)
4. 独 自の作りこみが必要(複雑であるほど費用高)
5. 後で仕様変さらになるリスクがある(可能性が高いほど費用高)
こ れらのうち、1と2は中小規模の企業なら気にする機会は少ないと思います。問題は3,4,5です。これら3点は、IT業者の主観で決まり ます。ユーザーがそう思わなくても、IT業者が「急ぐ」「独自の作りこみがある」「仕様変更のリスクがある」と思えば、その対応費用が 加算(というより掛け算)されるのです。
今回紹介した事例の販売会社は、IT業者の質問への回答は曖昧にしつつ夢だけ語りました。その曖 昧さが、見積額を高めた要因であったことは否定できません。
こういった無用な費用上昇を避けるには、ユーザー企業ができ る限り具体的な「構想」を立案し、必要十分な機能と要件を洗い出すことが肝要です。そして、自社の「構想」を前提にIT業者と交渉しま す。
機能や要件を洗い出すときは、「あったらいいな」というモノはなるべく含めないのがコツです。そういう機能は、あっても大抵使いませ ん。
また、見積もりは必ず複数の業者から取ってください。合見積を取ることで適正価格の判断ができ、 相場感覚も身についてくるものです。