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オープンイノベーション事例から学ぶ、ベンチャーが大手企業との協業実績を作る方法


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「オープンイノベーション」というキーワードを最近よく見かけます。カリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ博士か提唱した、イノベーションを促進する新しい概念です。簡単にいうと、企業内部と外部のアイデア・技術・サービス・製品などを組み合わせることで、革新的で新しい価値を創り出すという事です。

難しいようですが、もっと簡単に言えば、大手企業とベンチャーなどがコラボして、新しい事をはじめたり、斬新な取り組みを進めるようなことをひっくるめて、「オープンイノベーション」と捉えても問題ないでしょう。

実際「オープンイノベーション」は遠い世界の話ではなく、そうした事例が次々と出てきています。一昔前であれば、ベンチャーが開発した商品やサービスを大手企業が興味をもったとしても「面白いね」で止まってしまい、なかなかその先に進めなかったのですが、最近はベンチャーと製品やサービスを大手企業が積極的に採用する事例が数多くみられます。

今回は「オープンイノベーション事例から学ぶ、ベンチャーが大手企業との協業実績を作る方法」と題して、そうした事例のいくつか紹介したいと思います。

また、今回事例で紹介したベンチャー側からもコメントもいただきましたので、そこからどうすれば「オープンイノベーション」なビジネスチャンスが得られるのか、そのヒントがつかめればと思います。

オープンイノベーションの事例

事例1
カメラのキタムラ×Teachme Biz

株式会社スタディストが運営する業務マニュアル作成・管理サービス「ティーチミー」をカメラのキタムラが導入しました。

キタムラがスマホを販売する約440店に導入されており、主力の10機種を中心に100のマニュアルが作られて、導入から3カ月で閲覧件数は3万件を突破したそうです。
日経MJ2015年3月18日付記事より
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO84486590X10C15A3H56A00/

また、カメラのキタムラ以外にも損害保険ジャパン日本興亜でも使われています。日経産業新聞の記事「コスト6割減 損保ジャパン日本興亜の電子化作戦」では、損害保険ジャパン日本興亜社が紙のマニュアルの作成や運用に関するコスト試算は年間700万円にもなるそうで、そのコストの6割減を目指すそうです。
日経産業新聞 2014年11月6日付け記事より
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79263920U4A101C1000000/

カメラのキタムラとのコラボについて:

カメラのキタムラ様にTeachme Bizを導入して頂いたのは、TOKYOイノベーションリーダーズサミットという大手企業とベンチャーのマッチングイベントで先方と知り合った事からスタートしました。日経MJでも紹介されているとおり、導入後にかなりの成果が出ています。カメラのキタムラ様自身が、各SHOPでのマニュアル整備の負担が経営課題となっていたそうで、そこにTeachme Bizがピッタリとはまった形で、導入までは1~2か月とスムーズに進みました。

株式会社スタディスト 代表取締役 鈴木 悟史

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事例2
電通と連携した、ものづくりマーケットプレイス「rinkak(リンカク)」を運営するベンチャー

ものづくりマーケットプレイス「rinkak(リンカク)」の運営および企業向けデジタル製造ソリューションを提供する株式会社カブク
http://smartbusiness.jp/news/1052

国内最大手、世界でも有数の広告代理店で有名な電通と2014年9月25日に業務提携を発表しました。「rinkak(リンカク)」のサービスは、簡単に言うと3Dプリントのデータだけを売り買いして、製造はデータをもとに行うというもの。あらかじめ商品を作っておくと在庫になりますが、データだけなら在庫いらずで無制限に陳列できます。注文が入ってから作ればOKという未来の製造業。電通と事業提携し、全国自治体 「地域ものづくりクラウド」を進めるほか、世界市場での製品の認知獲得と販売を支援するそうです。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000007606.html

電通とのコラボについて:

電通様との業務提携ですが、もともと先方の担当者と繫がりがあったこともあり、3~4か月くらいで話がまとまって業務提携の発表にいたりました。

他にも大手企業とのプロジェクトやコラボ案件が複数進んでいますが、それらのきっかけも人脈繫がりによることが多いですね。なので、大手とのコラボ実現は人脈作りが重要ともいえます。

テッククランチやIVS、モーニングピッチなど有名なスタートアップ系イベントに出るのは効率的ですね。あとは協賛企業と仲良くなるのも狙い目です。参加するイベントの協賛企業名はチェックしておくべきでしょう。もし自分達のサービスに興味を持ってくれそうな相手であれば、イベント主催者にお願いして紹介してもらうとか。あとは当社はCo-Workingスペースに入居しているのですが、ここを通じての人脈作りも大きいです。普段からスタートアップに興味がある方がたくさん出入りしている場なので、自然と人脈が広がりますね。

株式会社カブク 代表取締役 稲田 雅彦

事例3
デアゴスティーニの週刊3Dプリンタを監修したベンチャー「ボンサイラボ」

「デアゴスティーニ♪」のフレーズが耳に残るCMで有名なデアゴスティーニ・ジャパンから、2015年1月に創刊した「週刊3Dプリンタ」。毎週届くパーツで3Dプリンターを作り上げるというもの。全55号を買い揃えると108,891円。市販の3Dプリンターと比べてもリーズナブルですね。

この「週刊3Dプリンタ」を監修したのが、2014年6月にスマビ総研で取り上げたボンサイラボ株式会社です。
http://smartbusiness.jp/news/2013

同社自体からもキット型の3Dプリンター「BS01」シリーズを開発・販売しています。筆者が取材をしたのですが、代表の大迫氏の3Dプリンター技術に掛ける熱意、製品の品質に対するこだわりは折り紙付き。同社が立ち上げたFacebookコミュニティーのエッセンスをユーザーが立ち上げたBS01 Wikiを見るとその熱さが感じられると思います。

デアゴスティーニとのコラボについて:

日本国内においては、3Dプリンター自体のマーケットがまだまだ未成熟です。国内の年間での出荷台数は1万台程度ですが、同社の週刊3Dプリンターは計画を大きく上回っています。これは大成功だと思いますね。私どもは3Dプリンター市場そのものを作り出すところから挑戦しているので、いろいろな会社にダイレクトにアプローチしていますが、デアゴスティーニもそうしてつながった1つです。週刊3Dプリンターの監修をさせていただきましたが、実現までには1年かかりました。

大手企業はグローバル化による国際会計への準拠、株主重視の経営といった変化により、短期間での成果を求められるようになっています。一方で米国Dell社のように株式公開から非上場にすることで、行き過ぎた成果主義を見直す企業も出ています。そういったグローバル化の大きなうねりの中で、現状日本は長いスパンでの事業創出、市場自体を作り出すといった挑戦が難しくなって事もあり、我々のような事業の経験豊富なベンチャーが大手企業にかわってリスクを取る事で、大手企業とのコラボが実現しやすくなっている背景ではないかと 見ています。また、良い意味でベンチャーはモルモットとして自信を持つ一面も必要だと思います。

ボンサイラボ株式会社 代表取締役 大迫 幸一様

事例4
富士ゼロックスの「四次元ポケットPROJECT」に参加したモノづくりベンチャー

テレビCMなどでご覧になられた方も多いでしょう。富士ゼロックスがドラえもんの「ひみつ道具」作りに挑戦する「四次元ポケットPROJECT」に、スマビ総研でも取り上げたベンチャーが参加していました。

「株式会社スイッチサイエンス」
http://smartbusiness.jp/news/1172

同プロジェクトは東京・神奈川・京都・岐阜・福井と拠点はバラバラな中小・ベンチャー企業6社が参加し、遠隔でありながらクラウドでのコミュニケーションで開発を進めたそうです。

ちなみに開発に参加したのは以下の会社

参画企業(五十音順)
海内工業株式会社(神奈川・板金パーツ製造)
株式会社クロスエフェクト(京都・筐体製造)
株式会社GOCCO.(岐阜・回路製造)
三和メッキ工業株式会社(福井・メッキ加工)
株式会社スイッチサイエンス(東京・スピーカー製造)
ユカイ工学株式会社(東京・デザイン、設計、実装など)

参考資料:http://www.fujixerox.co.jp/company/ad/4d-project/member.html

富士ゼロックスとのコラボについて:

このコラボ前後でこの製品の出荷数は3~4倍になりました。特に年末年始にはCMもたくさん流して頂いたこともあり、コラボ前と比べて10倍の出荷数となりました。また、新規の企業様からの大量発注の相談もきています。

このプロジェクトに参加したきっかけは、プロジェクトの中心的役割であったユカイ工学様からお声掛けいただいたことですね。

この事例とは別の案件ですが、Intel様や村田製作所様といった世界的な企業とのコラボ事例もあります。

Intel様とは2014年のMaker Faire Tokyo 2014というイベントで関連製品の製作やワークショップなどでご協力させて頂きました。
https://www.switch-science.com/pressrelease/20141121_SSCIEaglet/

村田製作所様と協力して開発したコンシューマー向け商品はこちらです。
https://www.switch-science.com/catalog/1919/

大手企業とのコラボについては、イベントなどでコラボ発表の専用スペースを用意するなどして注目されるように心がけています。昨年のMaker Faire Tokyoでは、大手企業など計4社(プラネックスコミュニケーションズ、Intel、ストラタシス・ジャパン、Marvel)とのコラボを一気に発表して注目されました。
http://mag.switch-science.com/2014/11/28/mft2014_demo_list/

株式会社スイッチサイエンスの担当者より

事例5
デジタルハリウッド大学と連携して外国人向け動画マーケティングを展開

訪日外国人旅行者向け観光ツアーマーケットプレイス「TripleLights」を運営する株式会社トラベリエンス
http://smartbusiness.jp/news/2731

同社はクリエイター養成で有名なデジタルハリウッド大学と連携して、訪日外国人旅行者向け動画マーケティングインターンシッププログラムを2014年8月22日から3か月間行いました。

同プログラムはデジタルハリウッド大学で映像やCGを学ぶ学生が、日本に関する動画を制作して、SNSやオンライン広告を活用してバイラルマーケティングを実践するというもの。海外マーケティングやオンライン広告など実務的な内容を3ヶ月間で学べるそうです。

プロの映像クリエイターに依頼すると、それなりのギャラがかかるでしょうから、意欲のある学生を巻き込んでマーケティングに活用するというのは、面白い発想ですね。いろいろなヒジネスで応用できそうなアイデアです。ちなみに学生は有償インターンということで、ちゃんとお給料が支払われたそうです。

ちなみに、3か月間で11本の動画が作成されたそうですが、好評につき第二弾が2015年3月からスタートしているそうですよ。

デジタルハリウッド大学とのコラボについて:

この企画のきっかけは、Facebookで「ビデオマーケティングで面白い事をやりたい」とつぶやいたところと、起業家仲間を通じてデジハリ様の担当者と紹介してもらったことです。もともと先方で有償インターンシップという制度があったため、当社はそれに参加した形になります。

他にもいくつかの大手企業とコラボのプロジェクトが進んでいます。当社はテレビや新聞などに取り上げられている事も多く、また経済産業省委託事業に当社や浅草商店連合会などとのコンソーシアムが採択されたり、観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」の委員に就任したりと公的な取り組みも評価して頂けているようで、大手企業側も安心してお話を聞いてもらえるようです。

株式会社トラベリエンス 代表取締役社長 橋本 直明様

「オープンイノベーション」を仕掛けるため、ベンチャーはどうすべきか

上記の事例のような大手企業とのコラボを実現するためには、なにをすべきでしょうか。その糸口についても、今回紹介した各ベンチャーの経営者にインタビューしてみました。

スタートアップ系イベントに出るのは近道

当たり前ですが、まずはサービスを知ってもらうことが第一です。テッククランチやIVS、モーニングピッチなどの有名なイベントに参加して、サービス紹介をするのはマストと言えるでしょう。

そうしたスタートアップイベントの聴衆も、大手企業のサービス開発やマーケティング担当者、メディアやベンチャーキャピタリスト関係者が多いので、PRには絶好の場です。

電通とのコラボ事例を紹介したカブクの稲田社長によれば、他にも大手企業とのプロジェクトを数件進めているそうです。

スタートアップ系イベント協賛する大手企業はベンチャーのサービス導入や連携に前向きなことも多いそうなので、協賛企業の担当者へ挨拶したいので紹介してほしいと主催者へお願いするのもおすすめです。

Teachme Bizを運営するスタディスト社の鈴木社長によれば、同社がカメラのキタムラとはじめてお会いしたのはドリームゲートが2014年9月に開催した第2回TOKYOイノベーションリーダーズサミットで、他にもう一社、フルキャストへのTeachme Biz導入が実現したとのことです。鈴木社長からは、「TOKYOイノベーションリーダーズサミットはとても打率の高い商談会でした」というコメントをいただきました。

鈴木社長によれば、従来の展示会や商談会はあまり営業効率が良くないので、メディアへのPRをメインにしたインバウンド営業に力を入れていたそうです。しかしTOKYOイノベーションリーダーズサミットは、参加する大手企業側の出席者が役員以上ないし事業部長など決裁権のある方のため、そうした相手に直接アピールできるのは「話が早い」とのことです。

大手企業は自前で新しい分野に研究開発や投資が出来なくなりつつある

日本の大手企業は昔と比べて、新しい分野への研究投資や投資が出来なくなりつつあると言われています。その理由はいろいろとありますが、グローバル化に伴う国際的な会計基準の適用や株主重視の経営転換などにより、研究開発投資の成果がより厳しく、より短期間で求められるようになったことが大きな背景にあります。

そうなると、大手企業は自前でやるよりベンチャーと組んだ方がリスクを取らなくて良いという事になり、逆に言えばベンチャーと大手企業と連携しやすくなっているとも言えます。

ディアゴスティーニの週刊3Dプリンターを監修したボンサイラボの大迫社長のコメントにもありますが、まさに大手企業にかわってベンチャーが市場創出から挑戦する、その際に大手企業とのコラボによって市場を大成長させていく、そうした時代になりつつあります。つまり主役はベンチャーというわけです。

執筆者:ドリームゲート事務局 宍戸

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