Vo.1 ECサポート3000社の実績を持つ専門家による、これからのビジネスを左右する「ECテストマーテケィング」とは。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

これまでに3000社以上のネットショップ支援してきたサヴァリ株式会社の福田 泰志です。業界草創期から楽天市場のECコンサルタントとして活動し、2007年には起業しました。インターネット通販業界で15年以上の経験を積んできましたが、今回「ECテストマーケティング」についてコラムを書かせていただきます。

これからネットで売れる商品とは? ECテストマーケティングで売れる新商品を作る

ECの人気商品にはどのようなものがあると思いますか。

有名タレント愛用の美顔器? 格安の飲料水を箱ごと? 規格外品の明太子の詰め合わせ?

いずれも正解ですが、最近では以下のような成功事例があります。

1枚6800円の男性用パンツが一週間で売り切れた

とあるテレビ通販企画会社から「肥満した男性向けのパンツ」という商品を売り出したいという相談がありました。

極度に肥満している方は不妊症になる確率が高いそうで、その理由の1つとして、太もものぜい肉などが睾丸を圧迫・体温で高温状態になりやすく、その結果、精子の働きが落ちる=不妊症になりやすいそうです。そこで、その企画会社では睾丸の温度が下がりやすい形状のパンツを開発したそうです。

この相談を受けて、ECテストマーケティングで実験してみました。仮説として、4P分析からこの商品の特性は高付加価値であり、かつニッチ商材のため通常流通する男性下着より高めの6800円と設定。ちなみに、男性用下着のネット上でのメイン価格帯は3000~4000円です。6800円という価格帯の男性下着が売れた実績は私の知る限りありませんでした。販促場所としてはターゲットとなる男性像を考慮して、ファッション性の高いECサイトではなく、総合通販ジャンルとしてamazonのショップを選定しました。

結果は、試作品として用意した商品が、わずか1週間で売り切れました。不妊症で悩む肥満男性のニーズは想像以上に強いことが証明され、その商品は本格的な販売に向けて準備を進めています。

上記の事例は、ECの常識では売れないはずでしたが、「既存のEC市場で売れていないから売れない」というのは間違いであり、ECテストマーケティングの重要性について再認識しました。

ECを使ったテストマーケティングのメリット

私の会社では2015年12月より「ECを使ったテストマーケティング」というサービスを開始しました。

新商品の開発や発売というのは企業にとって死活問題です。売れるかどうかわからない商品やサービスに、高額の設備投資、人件費、広告費をかけたくありません。しかし、新しい収益源は欲しい。リスクとリターンは企業経営の永遠の課題です。

効率的に新商品、新サービスを開発するにはどうすればよいのか・・・言い換えれば、買ってくれるお客様がはたしているのかを検証するにはどうすれば良いか。その答えの1つが「ECテストマーケティング」です。

通常、テストマーケティングとは新製品を本格的に販売する前に、限られた地域で少数に対して販売して反応を見る活動を言います。消費者からの新製品に対する評価を収集するためのテストという意味合いが大きく、テストマーケティングでの評価が高ければ、その商品は広範囲で大規模に販売されるようになります。逆にテストマーケティングを行った結果の評価が良くなければその商品は広く販売されること無く終わります。テストマーケティングを行えばリスクを減らすことができます。

ECテストマーケティングでは、商品特性に応じて、関連性の高いネットショップに協力してもらいテスト販売を実施します。テスト販売をリアルで行うか、ネット(ECサイト)で行うかという点が大きく違います。

テストマーケティングを行ったほうが良いことは説明するまでもありませんが、リアルで行う場合はいろいろと問題があります。

まず、テストマーケティングをするにしても、お客様の目に触れなければ検証のしようがありません。そのためには集客力のある売り場の確保が必要ですが、そうした場を確保するのは簡単ではありません。

そこで当社では販売力のあるネットショップをネットワークして、そこでテスト販売ができるようにしました。先に集客力のある売り場を確保したうえで、そこに新商品を並べて、反応を見るというわけです。

そして、テストマーケティングで重要なのは結果の分析、フィードバックです。一番わかりやすいのは「売れた」という事実ですが、なぜ売れたのかを明確にしなければいけません。

人気のネットショップに並べたかといって、商品ページが見られるとは限りません。銀座の一等地にある人気店の一角を借りたとしても、みんな素とおりするような状況はネットショップにも発生します。この場合、問題なのは商品を売る相手が間違っているという事です。原宿の人気店であれば売れる商品も、銀座では売れないという事です。そのためネットショップの持つ顧客と商品特性がマッチしているかどうかを分析します。

20代女性-独身OL層には響かないけど、30代女性-主婦層には反応が良い、といったフィードバックがECマーケティングでは可能です。アンケート調査などでも同じような分析は出来そうですが、実際に「売れた」という事実は強いですよね。分析結果の信頼性の高さもECマーケティングの強みの1つです。

また、ネットショップをテストマーケティングに使う特性として、販売モールごとに、いろいろな顧客層の反応がとれるという利点もあります。リアル店舗で、同時に複数個所でテストを実行するのは非常に大変です。

短期間で多様な顧客層からの反応を取れるという事は、例えば「いくらなら売れるか」といったプライシングの分析も容易です。価格を細かく刻んで反応を見るといった分析、また販売商品ページのA,Bテスト、広告効果の反応率など、ニーズに応じてテストマーケティングが可能です。

あるいは商品の訴求力についてのフィードバックもECテストマーケティングでは容易です。新しい服を開発して売るとしても、「機能性」「ファッション性」「価格優位性」どれを訴求するかで大きく違います。

前述の「6800円パンツ」にしてもブランドもののバッグや鞄、時計を売っているネットショップに「高くて高品質で太っている方にもピッタリのおしゃれな下着」として陳列しても全く反応せず、健康食品や生活改善グッズを売っているネットショップに「不妊症に悩む男性へ」という説明を付けると売れる、といった違いが出るわけです。

ECテストマーケティングの事例

当社はECテストマーケティングのサービスをリリースするため1年間ほど準備を行ってきたのですが、ご紹介したパンツの事例は、同サービスの実験として行ったものでした。

他の事例としては、墨田区に拠点を持つ中小ゴムメーカーから、オリジナルの商品を作りたいという依頼も受けました。これまでは大手の下請けとしてゴム製品を製造・納入していれば商売は回っていたのですが、このままでのビジネスでは先細りしかなく、なんとか独自商品で新しい収益源を見つけたいという事でした。その会社の経営者は三代目で、新しい事に挑戦したいという高い意欲もありました。中小メーカーが近年のEC競争環境でノウハウ、人材を確保するのは難しい。テスト販売プランでオリジナルのウェットスーツを開発する事になりました。

また、北米で大手繊維メーカーからも問い合わせがありました。日本に新規参入したいが、どのような製品なら売れるか調査したいので協力してほしい、という内容でした。

ECテストマーケティングは画像と商品データ、商品があればテスト販売が開始できます。すでに実績あるネットショップにご協力いただくため、わざわざ立ち上げる必要がありません。

受注してから各種業務、決済や配送などもアウトソーシング可能なので、そうした手間も不要です。つまり、ECテストマーケティングでは従来の方法に比べて、コストを非常に抑えられるというわけです。

最近では米国のKickstarter(キックスターター)や日本ではkibidango(きびだんご)などのクラウドファンディングサービスに製品企画を掲載して、どの程度のニーズがあるかを検証するケースも増えています。これもECテストマーケティングの1つの形ともいえます。

クラウドファンディングで支援者が集まれば、支援者から集めた資金で試験生産してユーザーに届けて反応を見るわけです。なかには有名企業が匿名で企画を出しているケースもあるそうです。

低コストで短期間に大量のフィードバックが得られ、かつ信頼性の高い結果が得られる、というのがECテストマーケティングの魅力です。

ECテストマーケティングを始めた理由

先日、「やずや」の矢頭 徹社長とお会いする機会がありました。その時「やずやは日本一テストマーケティングをする会社だ。テストマーケに合格しなければ売らない。ヒット商品の裏には大量の失敗作がある」という言葉をいただきました。「やずや」は言わず知れた、九州発の通販・EC大手です。TV CMなどで聞いた事がある方も多いでしょう。

私がECテストマーテケィングの事業に力を入れているのは、これが日本の製造業、モノ作り復活にもつながるビジネスだと信じているからです。

数年前に、東北地方にあるパン製造会社からこんな相談がありました。この会社のカレーパンはとても人気で、ネットショップでも毎月100万円も売れていました。しかし、経費を計算すると原価率40%、配送物流コスト10%、モール販促費などで20%。なおかつページ制作や更新、受発注の対応に必要な人員が1~2名ほどになるため、こうしたコストを積み上げていくと採算ラインは月商200万円となります。月100万円の売り上げでは黒字を継続することは難しかったのです。

結果として、上記のパン会社が持つリソースを10とすれば、ネットショップ運営にかかわる部分に5のリソースが奪われ、本来の新商品の開発、ブランディングが後手になります。そうなると、会社全体の売り上げも頭打ちになります。こうして、毎月これだけファンがついていたカレーパンは、EC市場から姿を消したのです。

もし、これをECテストマーケティングでおこなっていれば、ネットショップ運営にかけるリソースは0に近くなり、すべてのリソースで新たな商品開発、企画ブランディングへの時間に充てることができます。私たちはこういった撤退を余儀なくされたすばらしい商品をもつ会社のEC市場での再チャレンジも応援していきたいと考えています。

このような事例がたくさん生まれることで、日本の中小零細の製造業、モノ作り企業が元気になればと思っています。

「より良い商品がネット市場で買える健全なマーケット」これはネットで買い物するユーザーにとっても素晴らしいことだと思います。

テストマーケティング、新商品開発で悩んでいる方、ぜひ私にご相談ください。

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