中小ベンチャーにこそ必須の経営戦略 Vol.1 がんばってもがんばっても事業が成長しない理由

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

ヒューマネコンサルティング株式会社の阿部です。

「起業・創業、経営術、組織創り、社員教育・研修、マネーのエキスパート」として、キャリアコンサルタントやワークライフバランスNPO代表として、数多くの組織作り、社員教育や研修に携わって来ました。

起業する場合、組織をどう創り、成長させていくか?は非常に重要なことです! ベンチャーや中小企業の社長のよくありがちなのが、社長自身がプレイヤーとして頑張っている一方、組織作りや人事戦略をないがしろにして、伸び悩むというケースが実に多いです。このコラムでは「ワークライフバランス」を軸に強い組織・伸びる組織を作る秘訣を解説します。

■10年以上増収増益を続けるとある会社の経営秘訣とは!?

まずは、筆者の関与先のある企業のお話をします。

その会社は、この不景気にもかかわらず、10年以上増収増益を続けています。ある時、その理由や要因分析を社長に伺ったことがあります。

すると社長は、

「特別な事はやっていない」
「ただし社員は宝物と言う気持ちだけは持ち続けて経営している」
とおっしゃっていました。

具体的には、

  • 社員を支えている家族に感謝している
  • 退社時間にメリハリをつけてダラダラ仕事をさせない
  • 社員を信じ、任せられることは任せている
  • 社長も社員も同じ組織の人間と言う意味で、毎朝のトイレ掃除は社長自らやる

などといったことを、「地道に続けているだけ」と言った社長の言葉が印象的でした。

もちろん、この企業の業績好調の裏には他の要因もあると思います。

ただ、一つ言えるのはこの会社に伺うと、
「社員が生き生きとしている」

ということです。

筆者は、ここにこそ、今からお話ししたい「ワーク・ライフ・バランス」の原点があると考えています!

■なぜ日本企業の労働生産性は低下したのか?

リーマンショック以降、世界中の経済状況は混沌とし、日本においても大企業のみならず中小ベンチャー企業を取り巻く環境は激変、厳しさを増しています。

2010年の日本の労働生産性は、OECD加盟34カ国中20位、主要先進7カ国の中では17年連続で最下位となりました。

ちなみに労働生産性のトップは、ルクセンブルグで12万2782ドル(1368万円)。ノルウェー11万428ドル(1230万円)、アメリカ10万2903ドル(1146万円)と続きます。

日本の製造業の生産性はサービス業に比べて高い水準にあると言われてきましたが、OECD加盟国中の順位を見ると、1990年2位、1995年1位、2000年2位から、2005年8位、2009年10位と低落傾向にあるのも事実です。

これには、日本が強みとしてきた製造業でさえ、世界の中で競争力を失いつつあることがうかがえます。つまり、我が国は残業時間など、時間はかけているが、生み出す付加価値の低い国となってしまった!ということです。

何故生産性が低下してしまったのでしょうか?

労働生産性とは付加価値を労働時間で割ったもの、つまり純粋に労働の生産性を表します。イメージ的には、斜陽産業のある企業が、分子である付加価値を提供することも無く、労働量としての分母をいたずらに大きくしているだけの状態ということです。

簡単にいうと、

  • 売上に対して社員の労働時間がダラダラと多すぎる。
  • それに対して疑問も感じず、経営者はただ「厳しい!厳しい!」を連発する。

というような具合です。

ドキっとした経営者の方、いませんか?

しかし、

・こんなに忙しいのに、なんで会社の経営が厳しいのだろう・・・/p>

という課題に対して、

・がんばってもがんばっても事業が成長しない。きっと社員のがんばりがまだ足りないからだ!

というように、さらに社員も自分も追い込むように仕事をする・・・

こういう会社は疲弊していくばかりです。こんな日本の会社がこのまま突き進めば、日本企業は負のスパイラルに陥り、益々疲弊感が募り状況は悪くなる一方でしょう。

そこで筆者は、日本の企業を、そして何と言っても日本の企業421万社の内、99.7%を占める中小ベンチャーの未来のために必要なアクションの1つとして「ワークライフバランスを実現する」ことが必要だと考えています。

その理由は、「ワークライフバランスの実現」は、労働生産性の分子である付加価値を増大し、分母である労働時間をすっきりとした効率の良い(減少させる)ものにするプログラム以外何物でもないからです。

■経費ではなく重要な資産、財産! それは・・?

「会社の資産、財産は何か?」

こう質問した場合、会計を知っている人なら、「貸借対照表を見ればわかる」と答えると思います。

しかし、貸借対照表に載っているものは、お金に換算できる財産だけです。

たとえお金に換算できても、会計制度上、載せなくていい、あるいは載せるべきではないものは、財務諸表には載っていません。

では、会社でもっとも大きな財産は何でしょうか?

これこそ、「人」なのです。

この「人」こそが、会社の付加価値を生んでいく、ひいては労働生産性を上げる大きな原動力になっているのです。

そのように重要な存在ながら、「人」は財産には換算せず、財務諸表上は人件費として「経費」にしかなっていません。

つまり、会社の付加価値を生んでいく原動力である「人」を財産としてではなく、経費としてしか見ない企業が、労働生産性の低下にあえいでいると言っても過言ではないのです。

次章「Vol.2 ワークライフパランスは勘違いされている。」では、企業にとってもっとも貴重な財産である「人」を大事にしていくことが合理的な事か、ワークライフバランスの歴史もひも解きながら解説していきます。

バックナンバー

中小ベンチャーにこそ必須の経営戦略

Vol.1 がんばってもがんばっても事業が成長しない理由

Vol.2 ワークライフパランスは勘違いされている。

Vol.3 ワークライフバランスを経営戦略に組み入れて、強い組織を作ろう

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